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ペン先を引き抜くことの危険性と弊害

 万年筆の調整や改造を行う場合、ペン先を引き抜くことが必要になる場合があります。しかし、ペン先を引き抜くことにはリスクやデメリットがあります。

 基本的に、ペン先は必要がなければ引き抜くべきではありません安易な気持ちや好奇心で引き抜くのは避けた方が無難です。もし引き抜くのであれば、以下のデメリットを考慮の上で、すべて自己責任で行いましょう。

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(1)ペン先の入りが緩くなる

 まずデメリットの一つは、ペン先の入りが緩くなることです。一度もペン先を引き抜いていない場合、ペン先は首軸にガッチリと固定されており、ぐらつくことはありません。しかし、一度でもペン先を引き抜いた場合、ペン先の固定具合が緩くなります。何度も引き抜いていると、その内にペン芯ズレといった問題が生じたりします。

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 私の経験から言って、最もこの問題が顕在化しやすいのが、パイロットとアウロラです。パイロットは、元々差し込み具合が緩めの上、首軸内部に型がつけられていないので、ペン芯ズレが生じやすいです。アウロラは、首軸内部に型はつけられていますが、ペン芯の方が全く型がつけられておらず、しかも丸型なので、ペン芯ズレが生じやすいのです。

 またマーレンは、首軸内に入り込んでいるニブの長さが他のメーカーに比べると短いです。そのため、マーレンはペン芯ズレを起こしやすいです。首軸内に入り込んでいる部分のニブの長さも、この問題に大きく関わっています。


 ペン先を抜く場合、特に初めての引き抜きの場合、とても固くて抜くのに力を要します。その時に力を加えすぎたり、適切でない方向(左右方向)から力を加えたり、不適切な方法・道具を使ったりした場合、ニブが変形したり傷が付いたりします。見た目が悪くなるという問題の他、最悪の場合はインクが正常に出なくなって万年筆として使えなくなる、という可能性すらあります。

 →ゴム板は、万年筆のメンテなどに何かと便利


(2)ペン先のコンディション・書き味の悪化

 これは(1)と関連する内容です。ペン芯ズレが生じると、ニブに段差が出来ます。そうすると紙の上で引っかかるようになってしまいます。また、ニブが変形した場合、ニブとペン芯の間に隙間が出来て、インクが途切れたりします。ニブの変形により、ニブのスリットが締まりすぎたり開きすぎたりしても、適切なインクフローが得られなくなってしまいます。

 ペン芯とニブは、適切な位置にセッティングされて出荷されています。ペン先を引き抜くという行為は、そのコンディションを変えてしまう恐れのある行為ですから、安易に実行すべきでないことだと言えます。


(3)ペン芯のフィンを倒す、破壊する

 ペン先を抜く場合、ニブとペン芯とをゴム板などで挟んで抜くか、あるいはノックアウトブロックで後ろから叩き出したりします。特に前者の場合、その時にペン芯の外側に露出しているフィンを倒してしまったり破壊してしまったりすることがあります。

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 上の写真は、私が"やらかしてしまった"ペン芯です。アウロラのオプティマのペン芯ですが、何度も抜いたりしている内に、フィンに力が加わっていたらしく、ある時にフィンの一枚がポロッと取れてしまいました。フィンの一部が欠けてしまったからといって、全く使えなくなる、というわけではありませんが、外観の美しさが損なわれますし、またペン芯の機能が最大限に発揮されなくなってしまいます。


(4)メーカ保証が受けられなくなる

 各万年筆メーカの保証規定がどうなっているのかは詳しくは知りません。しかし、常識的に考えて、ペン先を引き抜くなどの行為を行った場合は、保証対象外となると考えるのが妥当でしょう。

 ペン先をいじったり削ったり改造したりした上で、ダメになったらメーカに泣きつく、というのはやってはならないことだと考えます。ペン先を引き抜くなどの行為を行う以上は、すべて自分で責任を負う、壊れたりしても後悔しない、という覚悟の上で実行すべきです。また、いじってダメにした万年筆を、補足説明なくオークションなどで売ったり、ペンクリの世話になるというのも、マナー違反と言えます。

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 ここまで、ペン先を引き抜くことのデメリットを色々と書いてきました。ペン先を抜く場合は、これらを覚悟の上で実行しましょう。

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万年筆 / 全般」カテゴリの記事

コメント

すご(^^;
たまらんすねぇ~。
怖くてできないペンも抜いちゃっていますし。
そうなのです。
自分は安ペンしかやりませんが、
その点もきゅすけさんは勇者ですね。

投稿: ZEAK | 2008年8月15日 (金) 18時02分

私も細字改造は安物限定でやってます。
安ペンのペン芯はフィンが切られてなかったりするのでフィン破壊の心配は無いんですが、
それでもニブを痛めたり首軸への差込が緩くなる危険性は有りますからね…
もきゅすけさんの豪胆振りにはいつも感服してます。

投稿: lloigor | 2008年8月15日 (金) 21時47分

僕は小心者ですので、とてもそんなこと出来ません。なんかドキドキしました。
http://blog.livedoor.jp/kuuga3776/

投稿: 快盗ゼブラ | 2008年8月15日 (金) 22時33分

ZEAKさん、こんにちは。
いや、私も結構ビビリだったりします。(^^;
ペン先の抜きに関しても、メチャメチャ固かったり、どうやって抜いたらいいのか不明だったりする万年筆が結構あって、そういうのはいまだに抜いてないですね。
基本的に、ある程度の力を入れさえすれば簡単に抜けるモノだけを抜いてます。

投稿: もきゅすけ | 2008年8月15日 (金) 22時54分

lloigorさん、こんにちは。
lloigorさんも改造をされているのは、ブログでは意見しました。
私が行っている改造は、元々は2ちゃんねるの文房具板で、先駆者が行っていた改造の真似っこなのですが、ひょっとして、それがlloigorさんだったりします?(^^;

豪胆といっても、私の場合は必要に迫られてですから、たいしたことじゃないです。(^^;
私は細字にしか興味がないという原理主義者の一方、万年筆は使ってナンボ、という考えですので、なんとか太めの舶来万年筆を一軍として使いたい、というワガママの行き着いた末がコレだったりします。

投稿: もきゅすけ | 2008年8月15日 (金) 22時58分

快盗ゼブラさん、初めまして。コメントの書き込み、ありがとうございます。
改造ですので、安易に他の人に勧められることではないですが、やってみると意外とそんなに難しいことではなかったりします。
吸入式などに比べると、両用式は構造が単純ですから。

とはいえ、いろいろとやってみて初めて分かることもあったりします。記事に書いたようなペン芯のフィンを倒すとか、ニブに傷をつけるとか、かなりアレな体験もどうしてもしてしまうことですから、万人向けではないのは確かですね。
私の場合、万年筆をいじくる内に、そのこと自体を趣味とするようになってしまいました。(^^;

快盗ゼブラさんのブログも拝見しました。同じく文房具好きのブログを開設する者同士、これからも頑張っていきましょう。勝手ながら、快盗ゼブラさんのブログをリンクに加えました。もし支障がある場合はおっしゃってください。
これからもよろしくお願いしますね。

投稿: もきゅすけ | 2008年8月15日 (金) 23時06分

ま、一部の特殊なものを除き、基本的には首軸にペンとペン芯が刺さっている
だけですからね(^^;
問題は、フィンがある奴ですね。
でも、高価なものは、やはりもったいなくてできませんねぇ。<モンブランとかペリカンとか(^^;
あと、保証期間中のもなるべくなら弄りたくないです。<σ(^^;

投稿: ZEAK | 2008年8月18日 (月) 18時51分

モンブランは、もし私が買ったとしたら、怖くていじれないかも。
でも今の状況だと、ずっとモンブラン童貞のままかも。(^^;
ペリカンはニブの固定方法がかなり特殊ですから、ニブを外すのに結構勇気がいりました。ニブを外したことによるトラブルも聞きますから、あまり外さない方がいいかもです。
まあ、私みたいに変な改造をするのでもなければ、外す必要もないんでしょうけれど。(^^;

投稿: もきゅすけ | 2008年8月19日 (火) 19時37分

こんばんは。
あちこち検索してみて、ここが詳しそうな気がしたのでお聞きします。
カスタム74のMS(ミュージック)を、ヘリテイジ92に換装することはできるのでしょうか?

投稿: むむむ | 2015年12月 8日 (火) 22時11分

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