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「パイロット ミュー90」のレビュー

 パイロットから創立90周年記念として発売された、ミュー90です。細字好きの私ですから、もちろんFニブです。かつて販売されていたミュー701などのミューシリーズの復刻版です。

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(1)9000本限定

 9000本限定での発売です。キャップレス パープルの場合は、ほとんどが海外での発売ということでしたが、このミュー90は基本的に国内での販売になるようですから、入手は難しくないでしょう。とは言え、生産の関係で月産1000本程度ということですから、入手までに時間がかかる場合があるかもしれません。

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(2)外観

316_2  全面ステンレスで、軸がそのままペン先へとつながっている独特な構造となっています。

 ペン先は刻印も何もなくシンプルです。それがかえって印象深いデザインとなっています。私は基本的に派手好みで、複雑な刻印やバイカラーのニブが好きだったりするのですが、こうしたシンプルなのも、これはこれで良いものですね。

(3)ペン先、書き味

 ペン先はしなりはなく、ガチニブです。インクフローは適度で、かすれたりすることもありません。字幅も一般的なパイロットのFです。


312  書き味は、首軸とペン先が一体化しているが故の、独特のものがあります。私が持っている万年筆の中で、ミュー90とよく似た書き味を持つのは、"クロスのヴァーブ"と"ウォーターマンのカレン"です。

 カレンの書き味を評して、「鉄の棒で書いているよう」と言われることがあります。ミュー90も基本的にはそういう系統の書き味だと思います。とはいえ、カレンほどピーキーな印象はなく、少しマイルドで、ヴァーブの方に近い印象です。

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 (※上から、ヴァーブ、カレン、ミュー90です。)

 シェーファーのVLRやレガシーヘリテージなども、ある意味似た傾向のペン先なのですが、シェーファーはペン先が上方に反っていますから、上記の万年筆とはまた違う傾向の書き味ですね。

(4)首軸

 全体が薄くヘアライン加工されていて、滑りにくい対策が施されています。とはいえ、金属ですから、どうしても多少の滑りやすさはあります。持つところが金属になっているのは苦手、という人は、注意した方が良いと思います。

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(5)嵌合式の見た目と感触

317  キャップは嵌合式です。軸の中央部に、嵌合式を実現するための機構があります。この部分は見た目があまり美しくないですね。まあ、キャップをつければ見えなくなる部分ではありますが。

 キャップは「ゴチッ」という感触で嵌ります。正直に言いますと、嵌合式の中でも最低クラスの感触だと思います。私がミュー90で一番不満な部分がこれです。万年筆はキャップを頻繁に開け閉めするモノですから、感触にもこだわって欲しかったところです。

 ちなみに、私が嵌合式の感触で一番評価しているのはセーラー銘木シリーズの鉄刀木で、次点がソネットです。

(6)軸バランス

320_2  ペン芯はシンプルですね。フィンなどは内部にあるタイプでしょうか。

 ミュー90は短めの万年筆で、特にキャップを閉めたときはかなり短めです。キャップを後ろにつけると、それなりの長さになります。

 私は、首軸の前の方を持って書くこともあって、ほとんどの万年筆でキャップを後ろにつけないで書きます。しかし、ミュー90の場合は、キャップを後ろにつけるのはほとんど必須と言っていいと思います。キャップをつけないと、さすがに短すぎます。

(7)天冠、クリップ等

 天冠にはスピネルがあしらわれています。天冠に装飾の石というので思い出すのはアウロラのエイシアですね。ミュー90のスピネルは、エイシアよりかは綺麗なんじゃないでしょうか。(汗)

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 クリップは天冠部と一体になった流線型のデザインです。パイロットだと、どうしても丸玉クリップの悪印象がありますが、これは良い感じです。

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(8)総評

 私は万年筆愛好家だけに、他にはないモノ、ユニークさ、がある万年筆が大好きです。そうした意味で、このミュー90には満足です。

 書き味に関しては、独特のものがありますので、好みは分かれると思います。

 万年筆初心者が最初に買う一本、としては正直勧めにくいですね。色々な意味で独特ですから。ただ、そうした独特さに惹かれる、という万年筆ファンにとっては、低価格ということもあり、オススメできる一本だと思います。

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    ※スペック一覧

・重さ 全体:23g キャップ:11g キャップなし:12g 首軸:9g
・長さ 全長:11.8cm キャップなし:10.4cm 後尾にキャップ:13.9cm
・太さ 首軸先端部:8mm 首軸中央部:11mm 胴軸後端:7.5mm キャップ先端:13mm キャップ後端:7mm

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万年筆 / 感想・レビュー (国産)」カテゴリの記事

コメント

おめでとうございます。
元祖μを持っているので、買わなくても良いと
パイロットの方に言われてしまいました(^^;
近いうちに、また紹介します。

昔書いたけど(汗)

μ90とはびみょーにデザインが違います。

投稿: ZEAK | 2008年10月 8日 (水) 19時02分

 あ、ZEAK さんのブログで、すでに元祖μのことを書かれていたんですね。
 これは失礼しました。昔に、ZEAK さんの所の万年筆関連の記事は全部読んだのですが、いかんせん、その頃はミューシリーズに全く知識がなくて、そのために、読んだ記事のことをすっかり忘れてました。

 私は昔から万年筆を使っていたものの、ずっとヤングプロフィット一本という時代が長くて、万年筆を集め出したのは最近なんですよね。ですから、昔のことはかなーり知識がなく、ブログでも最近のことしか書けなかったりします。(^^;

投稿: もきゅすけ | 2008年10月 9日 (木) 05時26分

こんにちは。またお邪魔します。
つい先日EBAYでミュー90 300ドルで落札されてました。
ミューは前から海外での人気が日本以上に高いといわれてますが、
ここまでくるとなんといっていいのか。。。
やっぱり早くほしいんでしょうか。限定といっても9000本もあるので
その内いまの品薄状態も落ち着いてくると思うんですが。

投稿: port123miguel | 2008年10月10日 (金) 04時29分

 port123miguel さん、こんにちは。

 過去のミューシリーズが人気があるのは知ってましたが、ビンテージでもない現行のミュー90がそこまでの値をつけるというのは驚きですね。
 私たちが舶来万年筆に感じるようなブランド感覚を、パイロットに感じていることもあるんでしょうかね。あちらでは、日本の万年筆を手に入れにくいとも聞きますし。

 しかし、そこまで高価格だと、自分のミュー90を売ってしまいたくなるぐらいです。個人的には、ミュー90の評価は微妙な物がありますので。(^^; まあ、私の英語力では無理な話なんですが。( ゚Д゚)y─┛~~

 冷静に考えれば、9000本というのはかなりな本数ですよね。マーレン辺りだと、十数本の限定品、なんていうのがあったりしますし。でも、もし万が一買い逃したら、といったことを考えてしまうのが限定品の恐ろしさでしょうか。そうした陥穽に分かっていて嵌るのが万年筆マニアの悲しい性と言えなくもありません。

投稿: もきゅすけ | 2008年10月10日 (金) 10時58分

先日ようやく丸善で受け取ってきました。
うーん確かにキャップの感触は褒められたものではないですね。
デザイン性とキャップの固定ギミックを両側で共通で使おうとした性だと思いますが。。。

投稿: どーむ | 2008年10月12日 (日) 11時44分

 どーむさん、こんにちは。

 ついにどーむさんも購入されましたか。キャップの感触は、あの小さな部品で嵌合式を実現しようとするのも無理があるんですかね。結構堅めですから、片手で操作しにくいのもマイナスポイントです。
 キャップを後ろにつけるときはあの部品を使わないようにすれば、多少はマシなんでしょうが、それではあの小ささも実現できませんし、また見た目もよろしくない、ということになってしまいますね。なかなか難しいもんですね。

投稿: もきゅすけ | 2008年10月13日 (月) 09時56分

こちらもアップいたしました、リンク張らせていただいております。
TB出来ないようなのでコメントでお知らせしますね。
http://blogs.yahoo.co.jp/ttokondo/56298779.html

投稿: どーむ | 2008年10月15日 (水) 23時44分

 どーむ さん、こんにちは。

 どーむさんもついに購入ですね、おめでとうございます。

 トラックバックは、以前にとんでもないトラックバックスパムが来て、削除に追われたことがあって、一時的にトラックバック機能を停止しておりました。失礼しました。
 もうそろそろ大丈夫かな、と思いますので、トラックバックの機能を復活させておきました。これからもよろしくお願いします。

投稿: もきゅすけ | 2008年10月16日 (木) 10時05分

こんにちは!

今回、ミュー90の入手、および、ブログでのレビューなどで
大変お世話になりました。ありがとうございました<(_ _)>

今までこのようなデザインの万年筆に出会ったことがなかったので
現物を手にした今、ものすごく感動しています(^-^)。


投稿: ろけろけ | 2008年11月 1日 (土) 02時11分

 ろけろけ さん、こんにちは。

 拙作の記事が少しでも参考になったのだとすれば、書いた甲斐がありました。
 ミュー90は独特の形と構造を持ちますから、持っていて満足感も高いですよね。

 記事からリンクしていただいて、ありがとうございました。さっそく、ろけろけさんのブログをリンクに加えておきますね。これからもよろしくお願いします。

投稿: もきゅすけ | 2008年11月 1日 (土) 08時53分

私もM90本日買いましたが、やはりペン先は皆さんご指摘の様にかなりガチニブですね。しかしパイロットさんにはキャップレスと良い、コイツと良い、レアなでコアなマニア泣かせの路線が非常に好感を感じさせますね。これでどちらもコレクションに加わりましたが、大事に使って行く積りです。

投稿: コスモ | 2009年1月 4日 (日) 00時06分

 コスモ さん、こんにちは。

 コスモさんもミュー90を購入されたのですね。(^^)
 このミュー90を含め、パイロットも元気ですね。金型を作るのは結構お金がかかるそうですが、それでも再生産してくれるというのは、ありがたい話です。
 ミュー90はガチニブですが、調整無しでもインクがスルスル出ますから、書きやすくていい感じですよね。
 ただ私の場合、乾燥肌故に、首軸が滑りやすく感じるのが難点です。(^^; どうも私の場合は、金属首軸と相性が悪いようで。

投稿: もきゅすけ | 2009年1月 4日 (日) 02時56分

初めましてMattと申します、カナダ在住です。
最近古いμの新品を見ましたので報告いたします。

私は万年筆初心者ですが、昔から好きで高校入学時(29年前)にお祝いとして
μをお願いし入手した経緯があるのですが、今までなかなか使い続ける事が
できませんでした。

やっと念願がかない最近とうとう日常的に万年筆を使える状況になったのですが、
その際色々な店を回り万年筆を探していた時の事です。

Fニブのカランダッシュを探すうちに見つけたトロントのある店で見つけたのですが、
現行のμではなく私が高校入学で貰った物と同じ万年筆(だと思う)が新品で
売っていました。

勿論ショーウインドーにはなくて、ペン専門の叔父さん店員に私の好みを説明して
いるとこれはどうだとなにやら奥からから出して来たのがμでした、一瞬現行の
物かと思ったのですが、キャップを外してみるとボディーに複数の溝が彫ってある
タイプの物でした。

ちなみに値段は聞きませんでしたが、今思うと聞かなかった方がよかったと
思っています。

それと、カランダッシュのMニブとFニブの話もあるのですが・・・・ここに書いても
いいのでしょうか?

少しでも皆さんの参考になったらいいのですが・・・
では

投稿: Matt | 2009年3月17日 (火) 02時12分

 Matt さん、初めまして。

 海外で昔のミューが売られているというのは、かなりマニアックな店ですね。昔はミューシリーズは、軸が装飾された物がいくつかあったみたいですね。ネットオークションでも色々見ますが、種類が多くて把握しきれないぐらいです。私はヴィンテージ系にはとんと疎いので、あまり詳しくはないのですが、ヴィンテージマニアだと、掘り出し物として喜ぶような一本だったのかもしれませんね。

 カランダッシュは、いずれは買いたい一本ですね。今のところは、何となく縁がないという状況です。ここに書かれても構わないですよ。そう言えば、私がカランダッシュの万年筆を持っていないこともあって、カランダッシュに関する記事が一本もないんですよね。全メーカを制覇する野望を持っている私としては、由々しき自体かも。

投稿: もきゅすけ | 2009年3月18日 (水) 05時16分

Mattです。
カランダッシュのニブのレポートです。
皆さんご存じ?だと思いますがカランダッシュのエクリドールにはB,M,Fの3種類のニブしかありません。
また私はカナダ在住ですが、北米ではあまりFニブを買う人が少ない様で私が買ったエクリドールもMニブしか有りませんでした(Fニブは取り寄せ)、仕方がないのでMニブを買ったのですが、やはりFニブが欲しくなり、トロントの専門店を見つけて買いに行ったのですが・・・

結果的にFニブ、Mニブの差がほとんど有りませんでした、これは店員さんも予想外だったみたいで、新品を2本も出してきて、私のMニブと何度も書き比べ悩んでました。

私としてはエクリドールのデザイン、品質、書き味、重さのどれもが好みに合っているので非常に残念でしたが、結局買うのをあきらめ今日LamyのLogoのEFニブ付きを買ってきました。

でも、書き味、重さ、品質・・・・が、まあ価格の差を考えれば仕方がないのでしょうか・・。

またこの専門店でも値段が高すぎるとの理由でカランダッシュのボトルインクは売っていませんでした。

最終的にカランダッシュのインクはあきらめて現在はPrivate Reserveのインクを使っています。

また何か発見があればレポートします。
では。

投稿: Matt | 2009年3月18日 (水) 13時33分

 Matt さん、こんにちは。

 カランダッシュのレポート、ありがとうございます。とても参考になりました。
 外国ではアルファベットを書く関係上、EFの人気がないのは分かりますが、Fですら基本取り寄せというのは、意外でした。
 それに加えて、FとMとが同じ大きさというのは、さすがに困りものですよね。2本のF字とも太めということは、そういう傾向なんでしょうか。いずれはカランダッシュを買いたいとは思っているのですが、細字好きの身としては、気をつけなければなりませんね。通販だと、かなり太めのが送られてきても困りますし、店頭買いが無難かもしれません。

 参考になる情報、ありがとうございました。カランダッシュは、日本ではあまり持っている人が少ないみたいで、情報があまり得られないので、助かります。

投稿: もきゅすけ | 2009年3月19日 (木) 12時36分

Mattです
カランダッシュに関して悲しい続報があります。

実は今日、カランダッシュのボールペン、万年筆とも返品してきました。
万年筆は購入当初から書き始めにインクが出ない不具合があり、様子を見ていたのですが8日間使用して全く改善される事なく、また購入店と例のマニアックな専門店の両方ででみてもらっても原因不明のまま使用していましたが、結局解決されませんでした。

そこへもってきて夕べからボールペンのインクが出なくなり、今日購入店へ持って行ってリフィルを目の前で新品に交換してもらいましたが、しばらく書くとまたもやインクが出なくなりさすがに店員も言葉がなく、あきれていました。

書き味や重さがちょうどよかったのでだいぶ悩みましたが、結局その店でもっとも信頼性のある万年筆と交換する事にしましたが、価格がカランダッシュの倍するので万年筆、ボールペンを返却してなお追加費用が発生し思わぬ出費となりました。

で、その万年筆とは、Faber Castell社のギロシェ・ロジウムです、入手したばかりなのでまだよくわかりませんが、しばらく使用してまたレポートいたします。

それではまた。

投稿: Matt | 2009年3月21日 (土) 10時53分

 Matt さん、こんにちは。

 あらら、返品ということになりましたか。書き出し掠れは厄介ですよね。そう簡単に直らないのが多くて困ります。数ヶ月使って慣らせることもありますが、やはり大変ですからね。ペンクリとかで調整してもらえればいいのですが、地方や海外では、簡単に見てもらうわけにもいきませんし。

 カランダッシュのリフィルは独自仕様なんですね。パーカータイプだと他のに交換できますが、独自タイプだと他の選択肢がないので、問題が生じたときは困りますね。

 ファーバーカステルのギロシェ・ロジウムを調べてみましたが、カランダッシュと似たような雰囲気の一本ですね。ああいうタイプがお好みなんですね。私は乾燥肌なこともあって、滑りやすい金属軸が少し苦手です。ですから、できれば首軸部分は樹脂の方が好きですね。もっとも、首軸が金属でも滑りにくい加工がされているのもあるので、そういうのなら構わないのですが。

投稿: もきゅすけ | 2009年3月22日 (日) 03時48分

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