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ペン先からインクが出てこなくなる理由

 万年筆をしばらく使わないでいると、ペン先が乾いて、インクが出てこなくなることがあります。そうならなくても、インクが煮詰まって、筆記線の色が濃くなる、ということが生じたりします。
 この記事では、そうしたことが生じる原因についてまとめておきます。

(1)ネジ式か嵌合式か

 万年筆のキャップには、ネジ式と嵌合式の2種類がありますが、一般的にネジ式よりも嵌合式の方が乾きやすい傾向があります。

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 もちろん、すべての嵌合式万年筆のペン先が乾きやすいというわけではありません。しかし、嵌合式の場合は、勢いよくキャップを抜くと、負圧でペン先からインクが飛び散るという事故が発生しやすいです。そうした事故を防ぐために、万年筆メーカは嵌合式ではキャップの気密性を低めに設計することが多いようです。

 また、低価格万年筆の場合は、設計が甘くて気密性が低いということもあるようです。そうした結果として、嵌合式万年筆ではペン先が乾きやすいです。


(2)インナーキャップの有無

 ほとんどの万年筆にはインナーキャップがついていますが、中にはインナーキャップがないものもあります。インナーキャップがない方が、ペン先が乾きやすいです。

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 また、設計や作りが良かったり、工夫されたインナーキャップの方が乾きにくいです。例えばプレピーは、工夫されたインナーキャップの一つです。

 →「プラチナ プレピー (Preppy)」のレビュー


(3)キャップに穴、隙間がある

167 万年筆の中には、キャップに穴が開けられているものがあります。PARKERのソネットやデュオフォールド、カトウセイサクショの万年筆などがその一例です。

 また、キャップに隙間があるものもあります。WARTERMANのクルトゥールなどがその一例です。

 こうした万年筆は非常にペン先が乾きやすいです。ペン先が乾く理由の最大のものだと思います。


 こうした穴や隙間を自己責任でふさぐという人もいます。ただしその行為には功罪がありますから、安易に行うのは避けた方がよいでしょう。

 →「PARKER デュオフォールド パール&ブラック」のレビュー
 →「PARKER ソネット」のレビュー

 なお、キャップに隙間があるかどうかは、キャップに水を入れて、水が漏れてくるかどうかで分かります。ただし、布巻きのDAKSでそれをやるのは避けた方がよいです。

 →「DAKS ハウスチェック クロス」のレビュー


(4)ペン芯の設計、ニブの大きさ

 ニブを含めたペン先は大きい方が、ペン芯内に保持できるインク容量が多いですから、インクは乾きにくいです。

 また、ペン芯の設計によっても違いが出ます。フィンが内側にあるインナーフィン方式の方が乾きにくい傾向があります。

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(5)インクの種類

 インクの種類によっても、乾きやすさは異なります。
 例えばパイロットのインクは乾きにくい傾向があります。それは、キャップレスという万年筆をラインナップに持つが故かもしれません。


(6)まとめ

 ペン先の乾きやすさは、(1)~(5)などの理由が複合的に絡み合って生じます。ですから、万年筆を購入する前に、ペン先が乾きやすい万年筆かどうかを把握するのは難しいですね。クルトゥールやソネットなどのように、乾きやすい万年筆ということがそれなりに知られている万年筆もあります。ただ、基本的には購入してみて初めて分かるものですね。
 いざ購入してから、インクを工夫するなり、キャップの穴や隙間をふさいだりする、といった対策を取る、ということになりますね。

 もっとも、一番良い対策は、インクが乾かない程度に頻繁に万年筆を使うことですね。ただ、たくさん万年筆を持っていると、それが難しいんですよね。


※備考

 今回の記事で書いたペン先の乾きやすさは、"書き出しかすれ"とは別問題です。
 書き出しかすれとは、長く放置しなくても、常に一画目がかすれるといった問題です。その原因は馬尻や段差などです。

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コメント

クルトゥールで思いっきりやられました。
乾くとか、そういう次元の話じゃなく、ペン先にインクの塊が・・・
どうしようもないですね。見た目がきれいで気に入ってたんですが、
もう二度とインクを吸わせることはないでしょう。
(今、ビーカーの中に浸かってます。明日か明後日には超音波洗浄の刑です)

投稿: zero-52 | 2008年11月 6日 (木) 01時52分

 zero-52 さん、こんにちは。

 ありゃ、zero-52さんのクルトゥールも、やはりダメですか。自分の所のクルトゥールは問題ない、という声もネットでたまに見ますが、乾きやすい、という声の方がクルトゥールでは多いですね。
 インナーキャップがない上に、クリップ部分にどうも隙間があるみたいです。私は補修材で無理矢理に隙間をふさいでしまって、それからは多少は乾きはマシになりましたが、そうした場合、見た目が悪くなってしまうのが難点です。ですから、あまり人には勧めにくいですね。
 パイロットあたりのシャバシャバなインクだと、乾きは多少はマシなんですが、そうした場合、紙にインクがにじみやすいという欠点もありますから、難しいですよね。

投稿: もきゅすけ | 2008年11月 6日 (木) 17時41分

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