「プラチナ プレピー (Preppy)」のレビュー
今まで色々な万年筆のレビューを書いてきましたが、ここらでお手頃価格の万年筆のレビューも書こうと思います。第一弾は、現行で最もコストパフォーマンスが高いと思われるプラチナのプレピー(Preppy)です。
(1)外観
プレピーは透明のスケルトン仕様です。天冠とクリップにはデザインのアクセントとして色が付いており、最初に入れられているインクカートリッジの色と対応しています。つまりその部分の色によって、インク色が分かるようになっている訳です。
軸にはロゴなどがプリントされています。このプリントは、初期の生産品では爪などで簡単にはがすことが出来ました。ですから、プリントをはがして完全なスケルトン軸にすることが出来ます。ただ、現行品では簡単にはがれないようになっていて、完全スケルトン化は難しいです。(※写真の赤キャップの方が完全スケルトン化したプレピーです。)
(2)ペン先
ペン先は鉄ですが、200円の万年筆にもかかわらず、ちゃんとイリジウムのポイントが付いています。字幅は一種類だけで、国産のFよりわずかに太いぐらいです。(追記:その後に0.5mmの中字も発売されました。)
ペン先の上面は平らになっており、そのためにバネのようなしなりがあります。この辺りの感触は#3776に少し共通するものがあります。この感触は独特で、この感触ゆえにプレピーの大ファンという人もいるぐらいです。(※ただ、過度の柔らかさを期待しないほうがいいでしょう。)
200円で、イリジウム付きでカートリッジが交換できる万年筆が買えるわけですから、コストパフォーマンスという点で言えば最高クラスと言っていいでしょう。万年筆の入門用としては良い候補の一つだと思います。対抗馬としては、1000円のハイエースネオなどが挙がるでしょうか。
(3)個体差
私は3本購入しましたが、どれも書き味に問題なく、不良品には当たりませんでした。ただ、ネットでの報告を見ると、ガリガリの個体に当たったという人も見られました。さすがに200円の万年筆だけに、全くハズレ無しというわけにもいかないようです。200円だけに買い直せば良いのですが、注意は必要です。もし外れに当たってしまった場合、ペン先調整の練習台としてでも使うという手もあります。
(4)嵌合式、両用式
キャップは嵌合式です。低価格の気軽に使う万年筆ですから、嵌合式なのは正しいあり方でしょう。カートリッジとコンバータの両方が使えます。もっとも、200円の万年筆に500円のコンバータをつけるのは、不釣り合いではありますが。
嵌合式の閉まり具合は硬めで、パチンと大きめの音を立てて閉まります。そして開け閉めを何度か繰り返す内に、キャップが割れたという報告をいくつか見たことがあります。この点はプレピーの弱点と言えるでしょうか。200円の万年筆ですから、十年単位で使用することは期待しない方が良さそうです。
(5)ペン芯
スケルトンですから、ペン芯のフィンも丸見えです。使っていると、ここにインクが溜まってきます。
このフィンの部分にインクが漏れてくるのを見て、「万年筆が壊れた」「不良品か」と思ってしまうことがあるようです。このフィンの部分は、過剰に供給されたインクがペン先から漏れ出さないようにするためのバッファ領域ですから、フィン部分にインクが溜まっても問題ありません。
なお、コンバータをつけてペン先からインクを吸い込むと、この部分が見事なぐらいに一気にインクで染まります。
(6)インナーキャップ
200円と低価格品ながら、インナーキャップが付いています。バネの力でキャップをかぶせる仕組みですから、気密性は高いです。
この仕組み(スリップシール機構)を備えた高級万年筆も発売されました。#3776本栖とセンチュリーです。このプレピーをきっかけに高級万年筆に興味を持ったという方は、それを購入するのも良いでしょう。
(7)ペン先分解
ペン先は引き抜けば抜けます。インクを替える場合などで、フィンの中も完全に洗いたいときには便利です。でもあまり必要もなく抜くのはやめた方が良いでしょう。
(8)総評
200円という価格の割には良くできている万年筆だと思います。細字好きとしては、比較的細めのペン先が嬉しいところです。色々なインクを試したいとき、外出先で気軽に使いたいとき、なくしても構わないような用途など、様々に使えると思います。
最大の問題は、入手性の悪さでしょうね。売っている店を見つけられるかどうかが、一番の障害かもしれません。ネットで購入するのが一番確実でしょう。メール便で購入するなどすれば、送料も抑えられます。
→プラチナ 万年筆 preppy(プレピー) 0.3細字 (文具のしんぷく)
※スペック一覧
・重さ 全体:11g キャップ:4g キャップなし:7g 首軸:3g
・長さ 全長:13.8cm キャップなし:12.2cm 後尾にキャップ:15.5cm
・太さ 首軸最小径:10mm 首軸最大径:11mm 胴軸先端:12mm 胴軸後端:10mm キャップ先端:13mm キャップ後端:11mm
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コメント
ココに来てあえてプレピーですか。
あの印刷が取れるのが面白かったんだけど、まぁメーカーとしては当然対応しちゃいますよね。ちなみに吊るしの個別包装で買うと「インク色の変更には対応しておりません」って書いてあったような覚えが。。。
投稿: どーむ | 2008年10月 6日 (月) 01時01分
どーむさん、こんにちは。
印刷が取れるのは面白いのですが、鞄の中に放り込んでおくと、摩擦で印刷がすぐにボロボロになっちゃうんですよね。さすがに見た目が悪いので、対応するのは仕方がないと思います。
インク色の変更は難しいでしょうね。特にフィンの中のインクを完全に落とすのは大変ですから、公式にはインク色変更不可ということなんでしょう。セーラーのジェントルインクだと、インクが混ざっても問題ないですけど、プラチナだとどうなんでしょうかね。ブルーブラックみたいな尖ったインクもプラチナにはありますが、さすがにプレピー用だと、マイルドなインクが多そうではありますが。
投稿: もきゅすけ | 2008年10月 6日 (月) 18時07分
万年筆好きの肉体労働者としては安さから気軽に現場に持って行けるのがうれしいのですが、ラフな使い方をしているからでしょうか?インクカートリッジを替えてカートリッジ2本目半分あたりからキャップがへたれてきます。胸ポケットからキャップをもって取り出そうとするとキャップだけ外れてしまうことが時々…
投稿: せのじ | 2008年11月 7日 (金) 23時57分
せのじ さん、こんにちは。
ありゃ、プレピーのキャップはあまり耐久性がないんですね。ネットで、プレピーのキャップの耐久性を疑問視する発言を見たことがあるのですが、せのじさんの所でもそうだとすると、プレピーのキャップのもろさは元の設計からみたいですね。
プレピーの軸はサインペンなどの軸と共通と聞きますが、長期間の使用には向かないでしょうか。まあ、200円だけに、買い替えも気軽に出来ますが。(^^;
投稿: もきゅすけ | 2008年11月 8日 (土) 02時19分
印刷はテレピン(画材屋で売っている)で綺麗に落ちました。
近くコンバーターを試してみます。
投稿: どんぐり | 2009年8月 4日 (火) 19時45分
どんぐり さん、こんにちは。
テレピン油でも落ちるんですね。私の手持ちでは金属磨きやコンパウンドの類しかないので、それで磨くと傷が付きそうでなかなか出来ないんですよね。テレピン油なら、透明軸の表面に傷が付かなそうですね。
投稿: EF Mania (管理人・改名中) | 2009年8月 4日 (火) 22時31分
はじめまして。
過去記事にすみません。
万年筆のことは何も知らずにプレピーを買ってみました。
私は学生で、答案作成の疲労を少しでも軽減したかったのです(^^;
書くのは楽だったのですが、答案用紙全てをうめるとちょっと読みにくいです。主張が強すぎるというか…。
もっと細字の万年筆ってあるんでしょうか?
無知で恐縮なのですが、1万円ぐらいまでの製品で出来れば探したいと思っています。
お勧めなどがあればアドバイスいただけませんか?
検討の参考にさせていただきたいのです。
図々しいお願いで申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。
投稿: さくら | 2010年7月15日 (木) 11時51分
>さくら さん
プレピーは国産にするとFM字程度の太さですから、国産万年筆のFやEFだと、プレピーよりかは細く書けますよ。
国産でしたら、パイロットのカスタム74、セーラーのプロフィットスタンダード、プラチナ#3776辺りが入門用万年筆としては、1万円ですので定番です。ただ価格が高めですので、まずはパイロットのプレラやセーラーのハイエースネオ辺りから使い始めた方がいいかと思います。それで、細字の万年筆が自分の好みに合うかどうかを判断できると思います。
投稿: EF Mania | 2010年7月17日 (土) 01時59分
>EF Maniaさま
ド素人の質問にも丁寧に答えてくださってありがとうございます(^^;
プレピーの太さの位置付けが分からなかったのでとても助かりました!!
いただいたアドバイスを参考にお店を覗いてみようと思います☆
ありがとうございました。
投稿: さくら | 2010年7月20日 (火) 12時57分
>さくら さん
こちらこそ、お役に立てて良かったです。
投稿: EF Mania | 2010年7月23日 (金) 23時51分
昨日、イトーヨーカ堂で黒(ほかの色はありませんでした。)を189円 で買いました。
併せて、交換用のカートリッジ2本入り 94円も購入。
久々の万年筆でなぜかワクワクしましたが、書き味は少々引っかかりがありますが、
値段のことを考えるとマアマアでしょうか。
今度は、青色を買いたいと思いますが、いろいろ文房具店を探して見ます。
投稿: ボン | 2010年12月24日 (金) 10時52分
>ボン さん
入手おめでとうございます。プレピーのペン先は一部には個体差があるという話もありますが、まずまず当たりのペン先の方が多いと思います。もうちょっと置いてある店舗が多ければいいのですが、今は文具店自体が少なくなっていますので、難しい面があるのかもしれませんね。
投稿: EF Mania | 2010年12月25日 (土) 04時21分
ユートクというホームセンターに147円で売ってます。インク2本確か74円。(どちらも黒のみ)早速一つ買っているんですが、ベースが銀色になっているようなので、(こすれたときに出た・・・)やすりで銀色にしています(笑)安いので黒のペン先と銀のペン先両方楽しめます(笑)
投稿: mituno235 | 2011年9月 7日 (水) 17時04分
>mituno235 さん
プレピーは普通の万年筆がおいていないところで見かけることが多い感じですね。かえって万年筆専門店だとなかったりすることもあるのが面白いところです。
投稿: EF Mania | 2011年9月10日 (土) 03時15分
そういえば佐賀県「えんぴつ館」(ニューヤングレックスを買った店)でも売ってませんでした。やはりボールペンとかと同じ感覚で使うものだからでしょうか・・・私は現在では普通はニューヤングレックス、少しふとめはプレピー、ふとめはグラマーという感じで使ってます。
投稿: mituno235 | 2011年9月10日 (土) 07時40分
※ちなみに「ハイエース ネオ」も同店(ユートク)においてありました。袋づめでした。
投稿: mituno235 | 2011年9月11日 (日) 08時13分
>mituno235 さん
いろいろな太さの万年筆があると、使い分けしやすいですよね。私は最近は細軸が好みになりつつあります。
投稿: EF Mania | 2011年9月12日 (月) 00時05分
ペン習字ペンが一番利便性高いですね。欲しい字幅です。
まあ、ここでの話はやめにしましょうか。話すところが広がるときついので。カスタム74のレビューに全部移行しましょう。
投稿: mituno235 | 2011年9月12日 (月) 19時43分
昨年の12月に、自分へのクリスマスプレゼントにと プレピー黒と カートリッジ2本を購入し ときどき楽しんで使用しています。
購入直後に、ここにコメントしたとき、「書き味は少々引っかかりがありますが」と書きましたが、その後スラスラ書けけるようになり大変満足です。
投稿: ボン | 2011年9月18日 (日) 15時16分
>ボン さん
ペン先が書き手の癖にフィットするようになって良かったですね。私はプレジールの方をよく使いますが、生来の細字好きのために、なかなかペン先が慣れるまで使うことができてません。もっと使わないといけないですね。(^^;
投稿: EF Mania | 2011年9月18日 (日) 17時44分
字幅は1つだけではないですよ。EF Maniaさんが持っているのはペン先の刻印が03なので0.3mmバージョンです。こないだ店に行ったら「0.5mm」がありました。詳しくはプラチナの公式ページへ。ちゃんと0.5のも載ってますよ。
投稿: mituno235 | 2011年12月 4日 (日) 10時48分
>mituno235 さん
この記事を書いたときは細字だけでしたので、そう書きましたが、その後に中字も発売されましたので、訂正しておいた方が良いですね。ご指摘ありがとうございます。
投稿: EF Mania | 2011年12月 4日 (日) 23時14分
仙台在住の万年筆愛好者です。
当方はヨドバシカメラ仙台店で買いました。168円です。この値段でしかもこの書き味は最高です。
一般の文具店よりもヨドバシでの購入をおすすめしますよ。文房具も売ってますからね。
投稿: 外人二十面相 | 2012年7月 1日 (日) 23時27分
>外人二十面相 さん
ヨドバシは文房具コーナーも充実していて、いい感じですよね。私も家電を買いにヨドバシに行くときは、文房具コーナーに寄って、いろいろ物色してます。ヴァルドマンのタスカーニを購入したのもヨドバシでした。
投稿: EF Mania | 2012年7月 2日 (月) 22時21分
ハイエースネオもこのコメント欄にあったので,再び登場です。
じつは,プレピーとハイエースネオと両方もっていて,その時の気分によって使い分けしてます。
プレピーとハイエースネオは,わたくし的に対称的な万年筆だとおもいます。
軟派でよくしなる感じのするプレピーに対して,硬派なペン先のしっかりした作りのハイエースネオ。
書き味柔らかでややフワフワ感があり,筆圧低めでかくプレピーに対して,硬めでややカリカリした感じで,筆圧高めでもokなハイエースネオ。
同じ細字でも中字に近い細字のプレピーと,極細に近いハイエースネオ(書き味の違いはこれに起因するのかも)。
ハイエースネオは,硬めの書き味だけに,下敷きなど硬いものを紙の下に敷いて使うと効果を発揮しますね。その分,字も旨く書けるような様な気が・・・・・・。
書き味は圧倒的にプレピーに軍配があがりますが,総合評価としては,いい勝負です。
どちらも,安物の廉価万年筆ですが,これも何かの縁と思い,大事に扱いたいと思います。
いままで,幾多の万年筆を使ってきましたが,すべて床におとして,ペン先をダメにした苦い経験があるので。
店員も言っていましたが,万年筆は価格ではなく,その人にあったものかどうかが重要なんですね。
投稿: 外人二十面相 | 2012年8月 6日 (月) 00時10分
抽斗を整理していたら大昔のカートリッシ゛が出てきました。万年筆本体はプラチナだけはなかったので,プレピーを購入。細字があるのを知らなくて中字(青)を。本来細字が好みだが(手が小さいので軸も細い方が使いやすい),これはこれで良い。
1979年製のカートリッシ゛,当時の価格は12本入りで120円のシールが! これを注入したところ,問題なく書けます。まあ,多少色が灰色がかって,『にびいろ(鈍色)』とでもいうのか,やや喪中仕様っぽくなりましたが,楽しいです。 ブラウンインクもあったので次は細字のイエローでも買おうかと。気軽に楽しむための万年筆がこんなに安く手に入るいい時代になったものです。
投稿: 猫友 | 2016年8月29日 (月) 15時35分