軸一体型ニブの万年筆が苦手な理由を考察してみる
私は、胴軸とニブが一体となったタイプの万年筆がとても苦手です。具体的には、ヴァーブ、カレン、シルバーン、ミュー90などの万年筆です。こうした万年筆は、筆記時にどうも上手くコントロールできず、字がよれてしまいがちなのです。
私は万年筆で重視するのは、「コントロールしやすくて綺麗な字が書けること」と、「バランスが良くて大量筆記しやすいこと」です。なので、それがしにくい軸一体型のニブを持つ万年筆は苦手な部類に入ります。
もちろん、これは私が苦手というだけで、軸一体型ニブを持つ万年筆が客観的に駄目だと言っているわけではありません。雑誌『万年筆スタイル 2』では、パイロット社内ではシルバーンの使用率が高いという記述もあることですし。
そうはいっても、私が苦手なことには変わりありません。なぜそうなのか、自分なりに仮説を立ててみました。
→CROSS「ヴァーブ」のレビュー
→パイロット「ミュー90」のレビュー
▼4つの仮説
(1)ペン先がお辞儀気味であることの影響
一体型のニブは、その仕組み上、どうしてもペン先がお辞儀気味になります。言ってみれば、ポスティング的な形状になっているわけです。(そこまで極端ではありませんが。)それ故、コリコリした書き味になりがちです。人によっては「鉄の棒で書いているよう」と表現する人もいます。
これが、私が苦手な理由の一つです。
この仮説を支える根拠としては、私はシェーファーのニブはそれほど苦手ではないということがあります。
VLRやレガシーヘリテージなどのインレイドニブは、軸一体型のニブと言えますが、ペン先には違いがあります。シェーファーのペン先は、お辞儀どころか、大きく反り上がった独特形状をしています。このペン先形状が独特のフェザータッチを生んでいるわけです。
これはカレンやヴァーブなどとは正反対の書き味です。
(2)首軸部の傾斜の影響
軸一体型のニブを持つ万年筆では、その特性上、持つ場所が傾斜していることが多いです。特にヴァーブはその楕円型の形状故、傾斜はかなり急です。それ故、どうしても持ちにくいと感じます。その違和感が、コントロールのしにくさにつながっているのかもしれません。
(3)思った位置にペン先がないことの影響
万年筆で字を書くときは、万年筆のペン先を意識しながら書くことになります。その時、普通のオープンニブの万年筆に比べ、一体型の万年筆では、その見える景色が違います。
視覚からの「この辺りにペン先があるだろう」という感覚に、微妙なズレがあるのです。それが、コントロールのし難さをもたらしているのではないかとも想像します。
同じような問題は、ロットリングのコアでも見られます。コアは、首軸の上部が大きく凹んだ独特の形状を持ちます。それ故、持つ手の位置とペン先の位置とが通常と大きく異なり、それが筆記時の違和感につながっています。
(4)インク汚れを防ぐために、前の方を持てないことの影響
一体型ニブの万年筆では、ニブの部分に指がかかると、指がインクで汚れてしまうことがあります。したがって、前の方を持つことができません。
私は普通の万年筆でも、特に前の方を持つというわけではありません。ただ、一体型ニブの万年筆を使うときは、インク汚れが気になって、どうしても普段よりもより後ろ目を持って使うことが多いです。このことも、使いにくさの一つの原因と言えるでしょう。
▼結論
ということで、4つの仮説を立ててみました。もちろん、はっきりとした結論が出る問題ではありません。あくまで私の感覚の問題ですし、自分でも不思議に思っていることでもありますから。
もちろん、慣れの問題もあるでしょう。私が所有する万年筆の圧倒的多数はオープンニブです。一体型ニブの万年筆は少数派だけに、扱いに慣れていない面があります。
これらの要素がいくつか組み合わさって、コントロールしにくい、という感覚が生まれているのでしょう。
人によって万年筆に対する感覚は大きく異なりますから、ここまで書いた事柄に同意する点があるという人もいれば、「その感覚は全然分からない」と感じる人もいるでしょう。ただ、この記事の内容で、少しでも読み手の参考になることがあれば、幸いです。
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