シリコンゴムのサック性能が気になる
ブログ「復活!シューちゃんの万年筆日記」さんの記事で、レバーフィラーのゴムサック劣化の話が出ていました。そのコメント欄で、port123miguelさんがゴムサックの入手先として、イギリスの「Cathedral Pens」というショップを紹介されていました。
そこでは普通のゴムサックの他、シリコンゴムのサックも売られています。万年筆用のゴムサックとしては通常のゴム(ラテックス)しか知りませんでした。このシリコンゴムのサックは気になりましたので、少し調べてみました。
→Silicon rubber pen sacs (Cathedral Pens)
■シリコンラバー
シリコンゴムのサックは白くて独特の外観を持っています。通常のゴムと比べて、強度やインク吸入性能はどんな感じなのでしょうね。種類によって違いはありますが、ゴムサックの耐久性は低いです。万年筆は一般に十数年単位で使われるものですが、ゴムサックは短い物では数年で硬化して吸入性能が落ちたり、ボロボロになってインクを吸わなくなってしまいます。もしこのシリコンゴムのサックで耐久性が向上するなら、必要なメンテナンスの頻度が下がってありがたい話です。
色々と検索して見ると、海外掲示板の「The Fountain Pen Network」に該当トピックがありました。ざっと読んでみると、シリコンサックの耐久性に関しては否定的な意見もありますね。シリコンサックは柔軟性に欠けるために、結果として長持ちしないということです。ただ長持ちするという意見もあり、はっきりしないところです。
→Silicone vs rubber sacs? (The Fountain Pen Network)
上記のトピックでは他のシリコンサックの用途も書かれています。ゴムサックは硫黄ガスを微妙ですが放出するために、長期間放置すると、セルロイドを変色させるなど痛めてしまいます。そのためにビンテージのセルロイド万年筆を長期保管する場合にはゴムサックを抜いておくという方もいますが、シリコンサックならその心配がないということです。
細かいことは分かりませんが、明確で大きな利点があるわけではなさそうなので、無理してシリコンサックを手に入れなくてもいい感じですね。入手する機会があれば使ってみるというスタンスでよさそうです。
■Fountain Pen Hospital
私は以前に Fountain Pen Hospital でマーレンの「ル・レーヴ」を購入したときに、一緒にゴムサックとサックセメントも購入しました。私はあまりゴムサックを使う万年筆は持っていないのですが、それでも数本はありますので、保険として購入しておいたものです。
ただ、価格はちょっと高めですね。冒頭の Cathedral Pens の方が安価ですし、好きな大きさのゴムサックを好きなだけ購入できます。ただ、ゴムサック単独での購入は送料が高くつきますので、何かと一緒に購入するのが経済的です。そうした意味では、万年筆を広く販売しているFPHの方に分があるでしょうか。
→12 Pen Sacs - Assorted (Fountain Pen Hospital)
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コメント
ゴムサックはレバー式の難点ですよね。
でも、逆に、それさえ付け替えれば長持ちするという簡便さもあるわけですが。
難しい問題だと思います。
こっちは最近、レバー式をかなり放出しました。
でも、まだまだ結構、残っていますけどね。
投稿: 二右衛門半 | 2010年9月25日 (土) 08時04分
シリコーンゴムは優秀ですよ。
-80度から200度Cまで使用できますし、耐薬品、非粘着性、科学的安定性にすぐれているので、
医療用のチューブにも使われています。(点滴用のあれ)
他のゴムに比べて、引き裂き強度と対磨耗性が見劣りするので、「耐久性に否定的」とあるのでしょうが、
これは工業的用途、つまり、空圧シリンダーなどのように、1秒間に数十回つかうものについて、の比較なので、
万年筆の使用頻度はまったく問題ないレベルです。
それよりも、合成ゴム(NBR)は、成型するときに硫化させますので、そちらのほうが危ないのじゃないかなあ。
半導体業界は、NBRは論外。最低シリコーン、うるさいところはフッ素ゴムでないと許してくれません。
投稿: 白髪猫 | 2010年9月25日 (土) 20時16分
>二右衛門半 さん
私はゴムサック式としてはボタンフィラーを持っているのですが、レバーフィラーは持っていませんので、一本ぐらいは欲しいと思っています。ただ、一本でおなかいっぱいになりそうですが。(^^;
投稿: EF Mania | 2010年9月26日 (日) 03時02分
>白髪猫 さん
詳しい情報ありがとうございます。参考になりました。シリコンゴムは優秀なんですね。Fountain Pen Network のトピックで否定的な見解を表明していたのが、研ぎ師として有名な Richard Binder氏でしたので、判断に困っていたところです。
シリコンゴムが優秀なら、デルタあたりでも採用すればいいと思うのですが、なかなか動きが悪いですね。コストの問題なのか、あるいは保守的な思想のせいでしょうか。現行でのレバーフィラーの製作には、ノスタルジーも入っているでしょうから。
ゴムの耐久性の判断には時間がかかりますから、個人では判断が難しいです。
投稿: EF Mania | 2010年9月26日 (日) 03時24分
初めて書き込みをします。
同じマーレンの万年筆をお持ちだからです。
綺麗な万年筆で気に入っていますが、毎日使ってはいないので、インクフローがよくありません。
オススメのインクなどありましたら教えてください。
投稿: bach | 2010年9月26日 (日) 22時34分
>bach さん
おお、同じ万年筆をお持ちですか。私はパイロットのブルーブラックを使っています。インクフローが良くて、性質も極端なところがないので、使いやすいです。ただ難点は、紙によってはにじむところでしょうか。私はパイロットのインクでもにじまない紙を使うことで回避しています。モレスキンなどは相性が悪いですね。
また、このマーレン21を含め、マーレン社の万年筆はキャップのクリップの根元に隙間が空いています。それもインクフローを悪くする要因です。自己責任の行為となりますが、ここを埋めてしまうというのも一つの手です。その方法については、以下の記事に書いています。
http://visconti.air-nifty.com/blog/2010/05/n-c92b.html
投稿: EF Mania | 2010年9月27日 (月) 00時45分
詳しい解説ありがとうございます!これは参考になります。ゴムサックに特化した記事って、あんまり見かけないんですよね。ありがとうございます!
投稿: シューちゃん | 2010年9月29日 (水) 12時01分
>シューちゃん さん
シューちゃん さんの記事のおかげで、いろいろと私も知ることができましたので、感謝しております。最近はゴムサック式自体が少なくなっていますから、あまり注目されませんね。伝統的な方式ということでアンティーク感はあるのですが、やはり使いこなすのは難しいです。
投稿: EF Mania | 2010年9月30日 (木) 00時14分
昭和30年代の吸入式万年筆がかなりあるので、すべてシリコンゴムのインクサックに交換したいのですが、国内では販売されていませんね。一時期、パーカーの旧式コンバーターからインクサックを取り出して使っていました。その後、安い中華製英雄万年筆を分解してシリコンゴムサックを使うことを考えましたが、既に実行されている方がいらっしゃいました。ちゃんと実用になるそうです。
投稿: endo | 2021年2月19日 (金) 15時05分