パイロット 「レグノ89s」 のレビュー
パイロットのレグノ89s、F字です。
(1)外観
レグノ89sはとても小型の万年筆です。長さや重さはパイロットのカジュアル万年筆のプレラと似ています。携帯に適した万年筆が欲しい方に向いています。同じ形状の小型万年筆として「レガンス89s」や「ステラ90S」があります。木軸が好きな人はレグノ89s、綺麗な樹脂軸が欲しい方はレガンス89s、コストパフォーマンスのいいシンプル軸が欲しい方はステラ90Sを購入されると良いでしょう。
レグノ89sに使われている木材はコムプライトです。圧力釜で木材板に樹脂を含ませ、これを幾層にも重ねて熱圧成形した素材です。加工木材ですから、生の木材の風味や熟成を楽しみたいという方には向きませんが、コムプライトは硬くて強く、水を吸収しません。また木目も安定していて、個体差は少ないです。実用として使うには良い木軸万年筆だと思います。
(2)ペン先
軸が小型の万年筆だけに、ニブは小型の3号ニブです。小さなニブですから硬いと思われるかもしれませんが、実際は弾力があって柔らかめのニブです。ペリカンのスーベレーンで、小型のM300のニブが柔らかいのと似たような感じです。柔らかいと言っても、パイロットのS系ニブほどの柔らかさはありません。微妙にしなります。
正直なところ、私はこのニブが少し苦手です。私は硬いニブで楷書の細字を書くのが好きですので、このニブをもてあまし気味です。ボールペンなど硬いペン先に慣れた万年筆初心者には向かないかもしれません。一方、しなるペン先を使って文字に表情をつけたい人には絶好の万年筆と言えます。(※ただ弾力について過度な期待はされない方がいいです。)
(3)筆記バランス
小型万年筆ですので、キャップを後ろに挿すことはほぼ必須でしょう。プレラに比べると少し細軸で、細身の万年筆が好きな人向きです。16.5gの万年筆ですから、筆記バランスに極端なところはありません。万年筆の自重で筆記するスタイルの人には物足りないかもしれません。
(4)その他
キャップリングやクリップはスタイリッシュなデザインで非常に気に入っています。高級感のある外見だと思います。嵌合式の万年筆で、キャップの開け閉めは快適です。使えるコンバーターはCON-20とCON-50です。
(5)総評
弾力のあるペン先を持つ小型木軸万年筆です。木軸は好きだけれど、メンテナンスやインク汚れにわずらわされたくないという方に向いている万年筆です。弾力のあるペン先を用いて味わいのある文字が書けます。
※スペック一覧
・重さ 全体:16.5g キャップ:7.5g キャップなし:9g
・長さ 全長:12cm キャップなし:10.7cm 後尾にキャップ:13.2m
・太さ 首軸最小径:8.5mm 首軸最大径:10mm 胴軸最大径:11mm 胴軸最小径:8mm キャップ先端:12.5mm キャップ後端:10mm
| 固定リンク
「万年筆 / 感想・レビュー (国産)」カテゴリの記事
- セーラー 「プロフェッショナルギア スリムミニ」 のレビュー(2011.10.31)
- パイロット 「シルバーン」 のレビュー(2011.10.25)
- プラチナ 「ギャザード」 のレビュー(2011.09.19)
- プラチナ 「90周年記念 25G カーボン軸」 のレビュー(2011.08.19)
- プラチナ 「#3776 本栖」 のレビュー(2011.07.10)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
はじめまして。いつも楽しく拝見しています。自分はほぼ日手帳にレガンス89sを挿しています。しなやかなニブで細かな字が書き込めるので大変気に入ってます。
投稿: ブッキー | 2010年10月12日 (火) 21時13分
私は、胸ポケット用に、レグノ89sを愛用しています。
コムブライトというのですか、加工したものとは知っていましたが、
名前までは気にしていませんでした。
最近はセーラー木軸スタンダードと併用です。
筆圧は低めなので、扱いやすいのですが、胴軸のネジが
緩みやすいのが、難というところです。
(セーラーは、そんなことはありませんでした)
セルロイドやアクリル・レジンより木軸の方が、手元にあるのは
多いです。
(マダガスカルローズウッドこぶ杢、花梨紅白こぶ杢、黒柿孔雀杢、スネークウッド、
ケヤキ笹杢、ブラジリアンローズウッド、デザートアイアンウッドの他に、鉄刀木、
智頭杉です)
木軸ボールペンとかは省いていますが(汗)
投稿: まっきい | 2010年10月12日 (火) 22時00分
>ブッキー さん、はじめまして。
ブログをご覧いただき、ありがとうございます。レグノ89sを使いこなしていらっしゃるのはスゴイですね。私の場合、このレグノ89sを手に入れたのは万年筆を使い始めた初期ですが、しばらくは引き出しの奥に仕舞われるぐらい、ペン先が苦手でした。最近になってようやく、使い方が分かってきたかな、という感じです。まだまだ私には修行が必要なようです。(^^;
投稿: EF Mania | 2010年10月13日 (水) 22時28分
>まっきい さん
加工したものだということを気にしなければ、レグノ89sの胴軸模様や色合いはとても綺麗ですよね。私が持っている木軸万年筆の中では一番好きです。
確かに胴軸のネジは緩みやすいです。カスタム系のようにゴムリングが挟まっていると緩みにくいのですが、小さめだけに難しいのかもしれません。
まっきい さんは木軸万年筆を多くお持ちですね。私はどうしてもものぐさですので、手入れのいらない樹脂軸をついつい購入してしまいます。(^^;
投稿: EF Mania | 2010年10月13日 (水) 23時17分
レグノ89sの緩みやすさは、私だけでは無かったのですね。
色合い等、ほんと低価格で良質なペンだと思うだけに、唯一の不満点です。
>手入れのいらない樹脂軸
木軸も手入れは、特に要らないですよ。普通に使うことで充分だと思います。
いちおう、つやふきんは買いましたが、磨き上げる趣味は無いので…(汗)
樹脂軸と同じ程度に拭く程度です。
投稿: まっきい | 2010年10月14日 (木) 15時10分
>まっきい さん
緩みやすさはなぜなんでしょうね。デスク上で使う分にはそんなに気にならないのですが、持ち運ぶとどうしても気になってしまいます。
大手メーカーの木軸は、何らかの表面保護がなされていると聞きますので、それほど気にする必要はないのかもしれませんが、せっかく使うからには綺麗にしたいと感じてしまいます。まあ、木軸の熟成を趣味としている方から見ると、たいしたことはしていないとなるのでしょうけれど。(^^;
投稿: EF Mania | 2010年10月15日 (金) 01時37分
同じ3号ペンのカスタム98の首軸にはゴムパッキンはありませんが、グランセにはゴムパッキンがついてます。
写真を拝見したところ、レグノでは首軸側が金属、同軸側も金属リングで接合しているようですね。
カスタム98で緩く感じたことは無いのですが、胴軸の接合部が樹脂だから摩擦力があるのでしょうか。
投稿: たかだ | 2010年10月16日 (土) 12時22分
>たかだ さん
情報ありがとうございます。グランセがゴムリング付きとなると、小さいからつけられないというわけでもなさそうですね。金属同士の接合の場合はリング付きの方が安定感があっていい感じです。
グランセは前から購入したいと思ってます。シルバーがいい感じで好みです。
投稿: EF Mania | 2010年10月16日 (土) 23時18分
モールス信号の打鍵送信、書き取り受信ができる特殊技能保持者です。
良インクフロー、本体の軽さ、ペン先のしなりという速記に向く特徴から
レグノ89sを愛用しています。勘合式キャップであることも実務向きですね。
私の場合、レグノ89sのしなりがしっくりと合いました。
しなりの効果として、速記でのペンの紙への当たりを和らげることの他に
緊張時の手の力みを気づかせてくれることが大きいです。
ボールペンから万年筆に変えたことで手の感覚や制御性が向上しました。
ちなみにグランセは金属製で重いため速記には合いませんでした。
古いモンブランはペン先が大変やわらかかったのですが
ちょっと押し付けるとペン先が開いてしまって使いこなせませんでした。
投稿: モールス通信士 | 2010年10月17日 (日) 23時28分
>モールス通信士 さん
モールス通信士さんは、レグノ89sを使いこなせていらっしゃるということで、素晴らしいです。私も軟調ペンを使いこなしたいと昔から思っているのですが、どうも生来の筆圧の高さからか、苦手なままです。
グランセの感想もありがとうございます。モールス通信士さんには合わなかったということですが、もしかしたら筆圧の高い私には合うかもしれません。(^^;
軟調ペンには、縦にしなるタイプと横にしなって切り割りが開くタイプがありますね。切り割りが開くタイプは確かにやっかいです。筆圧が強いと線が二重になったりしてトンでもないことになりますので、同じ柔らかいのであれば縦にしなる方が好みです。
投稿: EF Mania | 2010年10月18日 (月) 15時37分
切り割りが開くタイプは切り割りに対して垂直方向へ筆記すると
特にやっかいですね。キュキュッと鳴ってペンが滑りません。
レグノ89sについては国産細字であることも愛用ポイントです。
速記は大急ぎですからコンパクトなペン運びで小さな字になります。
小字で太字ですと「ク」と「ケ」や「r」と「v」の区別が難しくなるので。
そうそう、派手軸変わり軸好みのEFManiaさんですからレグノ89sは
黒軸ではなく赤軸を選択されたのですね。私も赤軸にしました。
落ち着いた赤色に木目の黒ラインが細かく或いは太く不規則に入っていて
ちょっと他にはない素敵なペンですね。
投稿: モールス通信士 | 2010年10月20日 (水) 22時29分
>モールス通信士 さん
私は派手な軸が好きですので、赤軸一択でした。万年筆は黒軸が多いですので、好んで買わなくてもいつの間にか黒軸が増えてきます。だから、積極的には黒軸は買わないようにしています。同じ黒軸でも形状が変わっていたり、マット系だと購入してます。
投稿: EF Mania | 2010年10月21日 (木) 09時24分