縦横の字幅が異なる舶来EFは好みではない
万年筆の細字の研ぎ方には色々あります。そうした中、多くの外国万年筆メーカが採用する独特の研ぎ方があります。それは、Mなどの太めのペンポイントのサイドをひたすら横から削り、ちょうど薄い円盤を二枚貼り合わせた形にして細字を実現するという研ぎ方です。こうした研ぎ方のニブを横から見た場合、MもFもEFもペンポイントは全部同じ大きさに見えます。写真の上が国産のFで、下が舶来のEFです。
私はこの研ぎ方が好きではありません。書き味も描線もどちらも好みから外れます。そのため、どうしても国産万年筆の方が使う機会が多くなってしまいます。
■メーカーによる違い
「円盤貼り合わせ型 EF」では、基本的にはペンの縦方向の描線が細くなり、横方向が太くなります。ただきっちりそうなるわけでもありません。普通は紙に対してペンを斜めに構えますから、曲線を描いていると思わぬところが太くなったり細くなったりと安定しないのです。私は小さな字の楷書をよく書きますので、縦横の字幅が同じ描線を好みます。なので描線が安定しない舶来EFは好きになれません。また書き味についても、理由は感覚的なものなので説明しにくいのですが、好きではないです。
そうした理由で私は国産の細字が好きなのですが、舶来万年筆のEFのすべてが「円盤貼り合わせ型」というわけではありません。私の所有する現行万年筆で言えば、「クロス、ウォーターマン、アウロラ、シェーファー、モンテグラッパ」は円盤貼り合わせ型とは違います。クロスのXFは一番国産に近いタイプの細字だと思います。ウォーターマンのEFは丸研ぎですね。アウロラEFも国産に近いですが個体差が少し大きいので注意が必要です。シェーファーXFも国産に近いですが、現行品にXFがラインナップされていないのが残念です。モンテグラッパEFもいい感じに細いのですが、ミクラしか持っていないので断定は避けます。
それに対し、円盤貼り合わせ型なのが「モンブラン、デルタ、ビスコンティ、コンウェイ・スチュワート、オマス」です。また「ペリカン、パーカー、ラミー、ヤード・オ・レッド」は、傾向としては円盤貼り合わせ型で、「そもそもEF表記の割にあまり細くない」という問題も抱えています。どちらにも問題はありますが、細字を求める私からすれば、描線が好きでなくても、まだ細字を書ける分、前者の方がマシに感じています。(^^;
なお上の記述は、あくまで私が所有する万年筆を元にしての個人の感想です。個体差の問題もありますし、ある程度は割り引いて考えてください。また、上に名前の挙がっていない外国ブランドについては、私はEFを持っていませんので、EFの研ぎ方は分かりません。
■コストの問題?
この円盤貼り合わせ型のEFは、現行の舶来万年筆に特徴的に見られる研ぎ方です。舶来のヴィンテージ万年筆では、同じ字幅表記でも今よりもずっと細めで、EFは十分に細く、国産のような Needlepoint です。
そうしたことから、なぜ現行の舶来メーカーはああいう形のEFを作るのか、ずっと不思議に思っていました。アルファベットを書く今のヨーロッパ人は縦横の字幅が異なる細字が好みなのか、とも想像していました。そうしたところ、研ぎ師で有名な Richard Binder氏が、この件について語っているページを見つけました。そこでは、「コストが原因でサイドのみを削っている」と書かれています。
→To the Point: Super-Size Me! (RichardsPens.com)
ああいう形状にする第一の理由がコストの節約だとするならば、ちょっとガッカリです。欧米では極細字の需要が少ないのかもしれませんし、製作に手間がかかるのかもしれませんが、私のような細字好きの需要に応えるニブの製作も期待しています。
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コメント
pelikan_1931師匠もこの円盤研ぎは嫌いだと書かれていましたね。
わたしもあまり好きではありません。
舶来だと、モンブラン70年代クラッシックのEFが好きです。
細長いペンポイントが付いています。
投稿: 二右衛門半 | 2010年10月14日 (木) 18時56分
シェーファーのXF、モリタ商店にありますよ。
しかもあの幻の?「バランス」が確か3色とも(赤青緑)が全部そろってるはず。
私は細字が好きではないので諦めてしまいましたが、おっちゃんに聞いてみてください。
目立つ所に出してなかったので、まだあると思いますよ~。
(XFニブばっかり残ってました)
投稿: ウサっ子三昧 | 2010年10月15日 (金) 00時30分
>二右衛門半 さん
pelikan_1931さんや二右衛門半さんも同じなのですね。私の感覚がおかしいという訳ではなさそうで、ちょっと安心しました。(^^;
私も最近昔のモンブランEFを手に入れて、気に入っています。No.32と220ですので、あまり珍しいモデルではないのですが。
投稿: EF Mania | 2010年10月15日 (金) 01時47分
>ウサっ子三昧 さん
情報ありがとうございます。さっそくモリタ商店さんの所に行って、「シェーファー バランスの ジェイドグリーンXF」を購入してきました。本当に感謝です。
このシェーファーバランスの極細字は、以前から探していた万年筆で、ヤフオクやebayでも出物はないか探していました。しかしXFというのは特殊な字幅だけに、なかなか入手できませんでした。それが今回、中古ではないデットストックで手に入れられた訳ですから、とても感激です。
モリタ商店さんには、緑・赤・青の3色が2本ずつ残ってました。字幅はXFが4本、Fが2本でした。どちらもさすがの細さですね。Fでも国産のFに匹敵するような字幅でした。まさしく掘り出し物という言葉がぴったりです。店主さんもほとんど存在を忘れていたと言ってました。緑か青かでかなり悩みましたが、より派手な緑にしました。今まで持っていなかった模様なので大満足です。
繰り返しになりますが、情報をいただきありがとうございました。
投稿: EF Mania | 2010年10月15日 (金) 21時20分
はじめまして。ざとちゃん様のご紹介でこちらにお邪魔しました。
使い続けたウォーターマン以外、EFで納得できる書き心地に出会えないので、最近では中字~太字にシフトしていましたが、あらためて探してみようかという気になりました。
またお邪魔します。今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: るり千代 | 2010年10月17日 (日) 17時00分
>るり千代 さん、はじめまして
ウォーターマンのEFがお好みということは、丸研ぎがお好きということですね。あの研ぎの細字は舶来万年筆では今では意外と少ないですので、探すのはなかなか大変かもしれません。ウォーターマンも、最近のEFはちょっと傾向が微妙に変わっている気もします。舶来万年筆の場合はビンテージの方が丸研ぎのEFに出会いやすいかもしれません。
外国製の万年筆にこだわらなければ、国産に向かう方が、細字の場合はやはり楽です。私は万年筆マニアですので、ある程度ペン先が好みでなくても色々と買い集めてしまいますが、細字のニブだけで購入するとなると、国産に勝るものはないと思っています。外国製万年筆で細字を求めるのは、やはり茨の道です。(^^;
投稿: EF Mania | 2010年10月18日 (月) 15時40分