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プラチナ 「#3776 本栖」 のレビュー

 ペン先が乾きにくくなる「スリップシール機構」を搭載した新型#3776である「#3776 本栖」を購入しました。この本栖は限定2,011本で、スリップシール機構がよく分かるデモンストレーター仕様です。9月には黒軸の通常版が発売される予定になっています。

 早速届いた本栖を試してみましたが、ボディもキャップリングも大柄になって高級感が増し、またインクフローも良くなっていて、とても満足できる仕上がりです。

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(1)スリップシール機構

 この機構は内蔵されたバネによって、インナーキャップがしっかりと首軸に密着するようになっています。これにより、インクの乾燥が防げます。この機構は元々は低価格万年筆のプレピープレジールで採用されていたものですが、ネジ式キャップでも機能するように、インナーキャップも回転するように設計されています。

 書き出しかすれの問題は万年筆を使う上での悩みの一つでしたが、これなら長期間使わなくても安心して使用できるでしょう。

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(2)ペン先&ペン芯

 今回の#3776のリニューアルに合わせて、ペン先とペン芯も改良が施されています。聞くところによると、インクフローを増やすことを主目的とした改良だそうです。実際に筆記してみると、かつての#3776の特徴であったインクフローの渋さが消え、潤沢にインクが供給されて、とても気持ちよく筆記できます。旧#3776と比較すると、ペン芯が幅広になっていて、これが潤沢なインクフローを生んでいるのでしょう。もちろんインクフローが渋い方が好きな方にとっては残念な変更かもしれませんが、潤沢フローが好きな方にとっては待ち望んだ改良と言えるのではないでしょうか。

 →プラチナ 「旧型 #3776」 のレビュー

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 ニブの方は基本的な形は変わらないのですが、首軸内に入り込んでいるニブの部分が短くなっています。これは残念な変更です。というのも、首軸内に長くニブが入り込んでいる方がニブが硬く固定されますので、ペン芯ズレなどのトラブルが生じにくいのです。今回の変更はおそらく金価格の高騰に伴うコスト削減が目的でしょう。ただし、ペン芯ズレを防ぐために、ペン芯にニブを固定する型がかっちりつけられている ようです。ですので、ニブが短くなっていますが、ペン芯ズレの心配はないかもしれません。その辺りは、長期使用してからおいおいレポートしたいと思いま す。

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(3)胴軸

 胴軸は旧#3776に比べると中央部がふっくらとした形状になっており、高級感があります。またサイズも大きくなり、キャップリングも豪華になっています。胴軸の中央部は飾りの面取りがされていて、なかなか良い雰囲気です。

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 国産三社は1万円台と2万円台の2種類の万年筆をサイズ違いで発売していますが、この「#3776 本栖」は、各社の2万円台の万年筆に匹敵する存在感を持っていると感じます。プレジデントと比較してもどちらが上のクラスなのか分からないぐらいです。もともと#3776は1万円台にしてはニブが大きめでしたが、胴軸がグレードアップしたことで、非常にお得感のある万年筆に仕上がっていると思います。9月発売の通常版「#3776 センチュリー」が楽しみです。

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(※上から、プレジデント、本栖、旧#3776です。)

(4)筆記バランス、その他

 筆記バランスは、キャップに金属部品が増えたので重心が後ろ気味になるのかと思いましたが、実際の所はそうでもなく、筆記感は旧#3776と同じ印象です。

 一つ注意すべき点としては、ネジの上部に少し段差ができています。私は気にならないのですが、「この部分をちょうど持つから少しの段差も気になる」という方の場合は、試筆してから購入された方が良いでしょう。

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(5)総評

 この新型#3776は、「インクが乾きにくい」「デザインが豪華に」「インクフローが潤沢に」という3つの点で、旧型から大きくグレードアップしています。国産のスタンダード万年筆としては近年になかった大改革と言えるのではないでしょうか。

 こうなると気になってくるのは、セルロイドなど他の#3776装着モデルがどうなるかですね。新旧混在となるのか、あるいは新型にすべて移行するのか、目が離せません。一方、旧型が好きという方は、在庫がある今のうちに旧型を購入された方が良いかもしれません。

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※スペック一覧

・重さ 全体:20.5g キャップ:10.5g キャップなし:10g
・長さ 全長:14cm キャップなし:12cm 後尾にキャップ:15.4cm
・太さ 首軸最小径:10mm 首軸最大径:10.5mm 胴軸最大径:13mm 胴軸最小径:10mm キャップ先端:15mm キャップ後端:12mm

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万年筆 / 感想・レビュー (国産)」カテゴリの記事

コメント

 うわ!もう入手されたのですか!早速のレビュー、楽しませてもらいました。気になったのは、

・インナーキャップの透明度があまり高くないこと
・やっぱりペン先の長さが短くなっていること(泣)

 それ以外は、是非一度手に取ってみたい!と思わせるものがありました。本栖はたぶん買わないと思いますが(もう「今年の本命の一本」を買ってしまったので…)、センチュリーはそのうち一本買いたいです。

投稿: しまみゅーら | 2011年7月10日 (日) 12時46分

 >しまみゅーら さん

 人気だという話をあちこちから聞いていましたので、早めに手に入れなければ売り切れそうということで、早めに動きました。(^^; 私は黒軸があまり好みではありませんので、#3776センチュリーよりも#3776本栖を優先しました。

 インナーキャップの色はちょっと残念ですね。ややプラスチッキーですので、少し色がついていた方が良かったかもしれません。

投稿: EF Mania | 2011年7月11日 (月) 01時45分

やはりこれでほぼ決まりですね。(通常のセンチュリーですが)デザインは旧型(バランス)が少しいいものの、関係ないですね。来年1月が購入なのでそれまでに地方の店に入荷されるのが願いです。(これは発売間もないので今は取り寄せが難しそうですね。来年1月には大丈夫でしょうか?)

投稿: mituno235 | 2011年9月23日 (金) 21時29分

 >mituno235 さん

 旧型の#3776はリングなどがかなり安っぽいので、実物を見るとちょっとガッカリするかもしれません。(^^; 1月にもなれば大丈夫だとは思いますが、プラチナは国産三社の中で一番小さな会社なので、もしかするとその頃も品薄という可能性もありうる感じですねー。

投稿: EF Mania | 2011年9月23日 (金) 21時46分

旧型はインクフローでけりがついてますね。
でも地方の小さな店ですよ。佐賀県と言うだけで文具店がないのに難しいですね・・・ カスタム74も専用のスタンドっぽい物(それぞれの太さと字の見本が書いてある)で置いてありましたが、Fだけありませんでした。入荷もほとんどないようです。取り寄せできるかどうかにすべてがかかりそうです

投稿: mituno235 | 2011年9月24日 (土) 08時56分

2連続失礼ですが・・・
追記:佐賀では万年筆を買う人自体少ないです。だから入荷などもないし、棚のほとんどがまだ埋め尽くされている(=売れていない)んでしょう。

投稿: mituno235 | 2011年9月24日 (土) 09時08分

 >mituno235 さん

 万年筆は地域差がかなりあるようですね。地方でも青森や島根、岡山には有名な万年筆屋があって、購入が容易だったりしますので、昔から続くこだわりの万年筆店が1つでも残っているかどうかで大きな違いが出る感じです。

投稿: EF Mania | 2011年9月26日 (月) 01時02分

どこもかしこも私のコメントで埋め尽くされてますが・・・すいません。
LAMY「サファリ」の記事で書いたんですが、えんぴつ館(ニューヤングレックスを買った店)に行きました。センチュリーは注文しないとないそうです。

投稿: mituno235 | 2011年10月 1日 (土) 19時18分

 >mituno235 さん

 普通の文具店だと仕方がないでしょうね。1万円の筆記具を買う層は限られていますし。昔に比べれば、ネットの発達で万年筆を買いやすくなりましたが。万年筆の売り上げはここ4~5年で向上しているようですが、その原因にはネットの発達もあるのかもしれません。

投稿: EF Mania | 2011年10月 2日 (日) 05時24分

インターネットでは買いにくいですね。私はあなたとは反対で派手な万年筆を好みません。黒軸大好きです。なので、柄の個体差などを心配する必要はないんですが、送料・手数料が微妙ですね。

投稿: mituno235 | 2011年10月 2日 (日) 09時37分

 >mituno235 さん

 家族にバレない購入法としては、コンビニ受け取りという裏技も。(^^; ただそのサービスをしている所でしか買えないというデメリットがありますが。

投稿: EF Mania | 2011年10月 5日 (水) 07時06分

セブンネットショッピングですね。あれは面白そうで一度使ってみたいということがあるんですが、
実はニューヤングレックスをケース代わりのメガネケースごとなくしてしまいました(汗) 実は取り寄せだと値段が下がるみたいで2680円だったのですが・・・

投稿: mituno235 | 2011年10月 5日 (水) 07時36分

 >mituno235 さん

 うわー、それはショックな出来事でしたね。2,680円とは言え、高価なことには変わりがないですから、ダメージが大きいですね。ご愁傷様です。

投稿: EF Mania | 2011年10月 5日 (水) 08時03分

実は今見つけてきました。お騒がせしました。

投稿: mituno235 | 2011年10月 5日 (水) 18時10分

 >mituno235 さん

 おお、見つかりましたか。安心しました。

投稿: EF Mania | 2011年10月 6日 (木) 05時51分

プラチナのホームページ見てたら、『次の限定万年筆は、あの本栖がバージョンアップ!7月1日発売!3776本限定』と出てました。
元祖本栖を入手し損ねたので、これは楽しみです。

投稿: 英雄100 | 2012年5月27日 (日) 02時16分

ところで、219ドルは何円なんでしょうか?17,436.78なのですが、4で区切ってみたら174,3678になりますが・・・こう言うのは私、不得意なんです。

投稿: mituno235 | 2012年8月20日 (月) 10時40分

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