金ペンを凌駕する国産の鉄ペン
「万年筆の良さを味わうのであれば、金ペンがいい」とは一般によく言われるところであり、私自身も基本的にはその意見に同意します。ただしあらゆる面で金ペンが鉄ペンに勝っているというわけでもなく、使用目的や状況によっては、鉄ペンの方が金ペンよりもいいと感じる局面があることも、私は今までに経験してきました。
具体的に言えば、「メモ帳など狭い紙面に小さな文字を綺麗に筆記したい」という目的を達成したい場合は、国産の細字の鉄ペンが一番使いやすいと思っています。
■硬くて小さいニブ
万年筆の魅力はいろいろありますが、私が一番評価している点は、低筆圧でもスラスラ書けるという点です。また、ニブの弾力による柔らかい感触や描線の太さの変化を楽しめるといった面白さもあります。ただそういった要素は、メモ帳に小さな文字を楷書で綺麗に書くという場合にマイナスに働く場合があります。
ペン先が滑りすぎるとコントロールが難しくなりますし、インクが出過ぎるのも乾く前に手でこすって汚してしまう恐れがあります。また、理由はハッキリ説明できないのですが、大きいニブよりも小さいニブの方が、小さい文字を書く場合は楽に感じます。こうした理由で、小さなニブを持つ国産の鉄ペンの方が、金ペンよりも扱いやすく向いている、という局面が実際に存在するのです。
万年筆愛好家としては、数万~十数万円する金ペンが数千円の鉄ペンに負ける局面があるということは、なかなか受け入れにくい面もあります。(^^; しかし実際に長年万年筆を使ってきた結果、そういう場合があるということは認めざるを得ないと思っています。
■現行の鉄ペン
ただし、鉄ペンであればすべて上記に当てはまるとは思いません。私の独断と偏見になりますが、「メモ帳など狭い紙面に小さな文字を綺麗に筆記したい」という目的を達する際に最適な鉄ペンとしては、以下の万年筆が挙げられます。
名称 | 価格 | 字幅 |
---|---|---|
パイロット kakuno(カクノ) | 1,000円 | F、M |
パイロット プレラ | 3,500円 | F、M、CM |
パイロット コクーン | 3,000円 | F、M |
パイロット ペン習字ペン | 500円 | EF |
パイロット ボーテックス | 1,500円 | F、M |
セーラー ハイエースネオ | 1,000円 | F |
最初の4本は同じニブですので、実質的には3種類と言えます。国産鉄ペンの中でも、これらはニブのペンポイントが小さく玉のようについていて、同じ字幅を安定して書きやすく感じます。ニブは小さくてコントロールしやすく、インクの出方も適度です。
ただ、こうした国産の細字鉄ペンにも弱点はあります。ペン先に弾力がないために、筆記時の衝撃が伝わりやすく、金ペンと比べると腕が疲れやすいのです。また、筆記時の面白みにも欠けます。そうしたデメリットも承知の上であれば、こうした国産鉄ペンには金ペンにはない良さがあると思っています。ちょうど先日にパイロットの「kakuno(カクノ)」も発売されたところですし、もし機会があれば、試してみられるのも良いのではないかと思います。
| 固定リンク
「万年筆 / 全般」カテゴリの記事
- 金ペンの紙当たりの優しさは魅力(2013.10.24)
- 金ペンを凌駕する国産の鉄ペン(2013.10.11)
- 二つのペン先を両端に持つ万年筆(2013.09.21)
- Edison Pen の吸入方式「Pump Filler」が興味深い(2013.08.05)
- 転がりにくい万年筆がお気に入り(2013.07.20)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
はじめまして。私もメモ帳などに細かい字を書く用途があり、そのときにはμ90を使っております。人によっては少し短すぎると感じるかと思いますが、なかなか良いですよ。見た目も面白いですし。唯一の欠点は、特にキャップ周りの設計の古さゆえか、飛行機でほぼ確実に逆流することです。
投稿: | 2013年10月12日 (土) 13時07分
セーラーの21K大型ニブは穂先が細いので邪魔に感じませんが、大きなニブは単にでかいので手帳など狭いところに書くときには邪魔に感じる人もいるようです。
パイロットの3号ニブやハイエースのニブなんかは細めで使いやすいです。
投稿: たかだ | 2013年10月12日 (土) 18時55分
本日文具屋さんでカクノを見かけ、FとM一本ずつ衝動買いしてしまいました。私も国産の鉄ペンの品質は非常に高いと思います。金ペンはきちんと調製されていれば最高の書き味なんですけど、ときどき外れもあるように思います。鉄ペンの品質は安定していますね。プラチナの3000円のバランスも、「メモ帳など狭い紙面に小さな文字を綺麗に筆記したい」という目的には合致しているように思います。5000円のバランスは、ニブが大きく、10000円のバランスに近いと思っています。
カクノは軸もニコニコマーク入りのニブも独創性があって非常に気に入りました。表情違いや色違いなどラミーのサファリのように展開して欲しいです。何となくCON-70が使えそうな気がしたのですが、内部で引っかかってNGでした。
投稿: 英雄100 | 2013年10月12日 (土) 23時37分
EFmaniaさま
カクノは細字に色しずくをいれて書いておりますがいいですね。
インクフローはかなりいいように思いますけれど、パイロットのインクだからでしょうか。
鉄ペンではプレラのCMニブに、ペリカンのハイライターインク(蛍光イエロー)
を入れて使っております。
わざわざ万年筆にする必要もないかもしれませんけれどいい具合です。
投稿: もくもく | 2013年10月14日 (月) 16時33分
EF Mania様と同意見です。金ペンが必ずしも万能というわけではないと思います。プレラを使い出してから、ますます鉄ペンの使用頻度が高くなりました(実用本位で使っているので、金ペンが苦手です)。国産の鉄ペンは価格・品質ともに優れており、安心感がありますね。
投稿: ヘンリー | 2013年10月15日 (火) 16時34分
そういえばμ90 もありましたね。
残念ながら私は乾燥肌のために、持つ部分が滑りやすくて使いこなせなかったのですが、確かに荒れはいい万年筆だと思います。
久しぶりに引き出しの奥から引っ張り出して、使ってみようかと思います。
投稿: EF Mania | 2013年10月20日 (日) 04時33分
> たかだ さん
パイロットの3号ニブは取り回しが良くていいですよね。3号ニブは5号以上と比べると、若干弾力性が高くて、これはこれで金ペンの良さを感じられる良いペン先だという印象です。
ペリカンのM300も、ペン先が小さくて弾力があるという点で、似た設計思想で、面白いです。
投稿: EF Mania | 2013年10月20日 (日) 05時07分
>英雄100 さん
確かに高額の金ペンは人の手が入って調整されているためか、たまに調整不十分なものにあたることがありますね。それに比べると機械作成の鉄ペンの報が安心感があります。
大きさ的にはCON-70が使えそうにも思うのですが、使えない仕様というのはちょっと残念ですね。
投稿: EF Mania | 2013年10月20日 (日) 12時28分
>もくもく さん
kakunoのニブはインクを選ばずに使えて、いい感じです。どちらかと言えば、インクフローがいいインクを使うと快適に使える印象です。
投稿: EF Mania | 2013年10月20日 (日) 17時24分
>ヘンリー さん
持ち歩き用だとさらに、価格が安いだけに安心して使えるのがいいですよね。貴金属としての豪華さに欠けるのが難点ですが…(^^;
投稿: EF Mania | 2013年10月20日 (日) 17時26分
洋物、金ペン、何本も持っていますが一番書きやすいのはハイエースネオです。 ^^;;;
投稿: | 2017年5月25日 (木) 19時44分