万年筆 / 感想・レビュー (国産)

セーラー 「プロフェッショナルギア スリムミニ」 のレビュー

 セーラーの「ハローキティ スウィートベリー万年筆」、F字です。この万年筆は、「プロフェッショナルギア スリムミニ」のハローキティ版です。

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 →セーラー Hello Kitty ハローキティ  スウィートベリー万年筆 (オフィスワン北浜店)

(1)位置づけ

 プロギアシリーズには4種類のモデルがあります。その中でスリムミニは最も短く小さいモデルで、携帯に向いています。全長は短いですが、キャップを後ろにつけると筆記に問題のない長さになります。

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 ただネジ式でキャップを後ろに装着するために、筆記状態にもっていくには少し手間がかかります。またその仕組み故に、携帯向きの万年筆ではありますが、「片手に手帳を持ち、片手で万年筆を筆記できるように準備をする」ということは難しいです。「携帯するものの、使用するときはデスク上で」という用途に向いています。

「プロフェッショナルギア ファミリー」の一覧表

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(2)ハローキティ

 私が持っているのはハローキティの生誕35周年を記念した限定万年筆です。ペン先とキャップにハローキティのロゴと顔が刻印されており、ハローキティのファンにはぴったりの万年筆だと思います。濃いピンクと薄いピンクの組み合わせも、かわいらしくて好印象です。

 なお、姉妹モデルとして「プリンセスカラー万年筆」もあります。そちらはプロフィット21サイズの豪華版です。

 →セーラー ハローキティ・プリンセスカラー万年筆 (高級万年筆の文栄堂)

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(3)ペン先

 セーラーの14Kニブで、安心の書き味です。14Kニブはインクフローが標準的で、書き味も癖がないために、万人に勧められる万年筆だと思います。ニブ上面にはハローキティが刻印されていて、とてもユニークです。

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(4)筆記バランス、その他

 16.5gと軽い万年筆ですから、軽快に使えます。私は普通はキャップを後ろにポストしないのですが、さすがにこれはポストして使用しています。

 短い万年筆だけに、コンバーターは使えず、カートリッジ専用です。

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(5)総評

 携帯用に小さな万年筆が欲しいという方にぴったりの万年筆です。細字のセーラー14Kニブは安定の書き味で、小さな文字で楷書を書くのに向いていると思います。

 扱いやすい万年筆で私の使用頻度も高いのですが、キャップを後ろにネジ式でセットする必要があるため、これを面倒と感じる人もいると思います。その点をどう考えるかで評価が変わってくるモデルでしょう。代替モデルとしてミニではない「プロギア スリム」もありますので、購入の際は比較検討されると良いでしょう。

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※スペック一覧

・重さ 全体:16.5g キャップ:8g キャップなし:8.5g
・長さ 全長:10.5cm キャップなし:9.2cm 後尾にキャップ:13.4cm
・太さ 首軸最小径:9mm 首軸最大径:10mm 胴軸最大径:12mm 胴軸最小径:11mm キャップ先端:14mm キャップ後端:10mm

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パイロット 「シルバーン」 のレビュー

 パイロットの「シルバーン 格子」、F字です。

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 →パイロット シルバーン. (書斎空間)

(1)位置づけ

 「シルバーン」の名前から連想されるように、胴軸がスターリングシルバーの万年筆です。シルバー製のパイロット万年筆が次々廃番になる中、銀軸好きには貴重な一本です。昔ながらの貼り付けニブ方式の独特の形状をした万年筆で、デザインにしても書き味にしても、他とは違う個性を持った万年筆だと思います。

 シルバー製であり、しかも中央部はそれなりに太軸なため、洗練された高級感がある万年筆だと思います。モンブラン149のような黒軸金トリム以外で高級感のある万年筆を求める向きには、良い候補となると思います。

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(2)ペン先

 ペン先は貼り付け型のニブで、それ故に他とは違う独特な筆記感があります。多少の弾力はありますが、基本的にはコリコリ系の書き味です。系統としては「セーラー 銘木シリーズ」や「シェーファー タルガ」のような筆記感です。

 →セーラー 「鉄刀木(たがやさん)」 のレビュー
 →Sheaffer 「タルガ 1180 イエロースワール」 のレビュー

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 実は私はこのシルバーンの書き味や筆記バランスが長らく苦手で、購入してから長い間、使用頻度がとても少なかったです。ただ、最近になってコリコリ系の書き味も好きになって来て、このシルバーンもボチボチ使用するようになって来ました。これは私の好みが変化したからなのか、書き味に対する許容度が上がったからなのかは分かりませんが、今まで死蔵していた万年筆が一軍復帰したのは嬉しいことです。

 →最近はコリコリ系の書き味が好み

(3)筆記バランス

 金属軸ということもあって、34gとそこそこ重めです。ただ重量配分を見ると、キャップが15gで胴軸が19gと、胴軸だけならそれほど重くはありません。ですので、私はキャップをつけずに使用しています。リアヘビーが好みの方は後ろにキャップをつけ、軽い万年筆が好みの方はキャップなしで筆記すると良いでしょう。

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(4)胴軸デザイン

 胴軸のデザインは「つむぎ / 格子 / 松竹梅 / 石だたみ」の4種類です。私がシルバーンを購入したのは万年筆を集め出した初期ということもあって、最も万年筆として無難そうな格子にしました。しかし今から考えると、他の柄の方が個性があって、ちょっと失敗したかなと思います。今購入するなら、つむぎか松竹梅にするでしょう。

 また海外では、蒔絵のような図柄が描かれた多数のオリジナル・モデルが発売されています。海外モデルについては以下の記事で詳しく書きました。

 →海外版のシルバーンに「朱鷺と亀」模様が追加

(5)その他

 両用式で、対応するコンバーターはCON-50とCON-20です。最高のコンバーターであるCON-70が使えないのは残念です。

 ニブは接着剤で貼り付けられていて、剥がれた場合は修理対応となります。シルバーンと同じ貼り付けニブのエリートで、ニブが剥がれた経験があります。

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(6)総評

 独特の貼り付けニブ形式ゆえに、他にはない筆記感のある万年筆です。そのため好き嫌いが分かれるかもしれません。ただ万年筆を扱った雑誌で、「パイロット社内でも愛用者が多い」との記述を見たことがあります。それだけハマる人にはハマる万年筆なのかもしれません。

 「洗練された高級感のある万年筆が欲しい人」や「ありきたりな万年筆では満足できない人」であれば、検討対象に入れるべき万年筆の1本と言えるでしょう。

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※スペック一覧

・重さ 全体:34g キャップ:15g キャップなし:19g
・長さ 全長:14.2cm キャップなし:12.7cm 後尾にキャップ:15.1cm
・太さ 首軸最大径:12mm 胴軸最大径:12.5mm キャップ最大径:13.5mm

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プラチナ 「ギャザード」 のレビュー

 プラチナ「ギャザード」の赤軸、Fニブです。

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 →プラチナ ギャザード#3776 万年筆 (オフィスワン北浜店)

(1)位置づけ

 ギャザードはプラチナのスタンダードラインの一つです。#3776と比べると、軸がやや太くて長く、嵌合式の万年筆です。

モデルニブキャップ価格特記事項
#3776バランス #3776 ネジ式 1万円 軽量・細軸
#3776センチュリー #3776 ネジ式 1万円 スリップシール機構
ギャザード #3776 嵌合式 2万円 ギャザード軸
プレジデント プレジデント ネジ式 2万円 大型・太軸
セルロイド #3776 ネジ式 3万円 カラフル・柄軸
ブライヤー #3776 嵌合式 3万円 木軸

 →プラチナ 「#3776 本栖」 のレビュー
 →プラチナ 「#3776 バランス」 のレビュー
 →プラチナ 「プレジデント」 のレビュー

(2)筆記バランス

 ギャザードの中央部には重りとなるリングがあり、特にキャップを後ろにポストするとリアヘビーのバランスとなります。万年筆を寝かせて書くタイプの人に合っていると思います。ただキャップをささないと、バランスは標準的になりますので、私はキャップはささずに使っています。

 首軸は長めで、嵌合式だけにネジ切りもありません。ですので「ネジ式の万年筆ではネジが指に当たって痛い」という人にはピッタリの万年筆だと思います。私のこの首軸部分の仕様は大好きです。

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(3)ペン先

 ペン先は#3776ですので、安心の書き味です。近年#3776本栖とセンチュリーが発売されて、リニューアルされました。今のところギャザードは旧仕様の#3776ニブですが、新仕様に変わるのかどうか気になるところです。新仕様のギャザードも悪くないですが、旧仕様のままで使い分けするのも悪くなさそうです。どうなるのかは分かりませんが、展開を見守っていきたいところです。

 キャップが嵌合式ということもあって、ペン先は少し乾きやすい傾向があります。ただ一週間ぐらい放置しても書き出しかすれが生じることもなく、実用上は問題ありません。

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(4)その他

 胴軸のギャザード加工は滑り止めの役割を果たしているそうですが、私は首軸を持つこともあって、恩恵を感じたことはありません。このギャザード加工ですが、昔は手作業でろくろで挽いていたそうです。ただそれではコストがかかりすぎるということで、今は樹脂成形になりました。私の持っているのも樹脂成形されたものだと思います。

 キャップ上面のデザインは好きです。ただこの赤軸はあまり好みではありません。私は基本的には黒軸は好みではないのですが、このギャザードに関してだけは、黒軸の方が雰囲気があって良いと思います。

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(5)総評

 嵌合式で首軸部分に段差やネジ切りがないため、とても扱いやすい万年筆だと思います。#3776本栖とセンチュリーが出てくる前は、プラチナの中で最も好きな万年筆でした。今でも、センチュリーとは別の長所がたくさんあって優れた万年筆だと思います。

 胴軸のギャザード加工は好き嫌いが分かれるかもしれませんが、#3776系列を購入する場合は検討対象に十分入る万年筆だと思います。1万円高くなりますが、ブライヤーも似たような仕様ですので、そちらも併せて検討するのも良いでしょう。

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※スペック一覧

・重さ 全体:21.5g キャップ:9g キャップなし:12.5g
・長さ 全長:14.1cm キャップなし:12.6cm 後尾にキャップ:16.1cm
・太さ 首軸最小径:9mm 首軸最大径:11.5mm 胴軸最大径:13mm 胴軸最小径:9mm キャップ先端:14mm キャップ後端:12mm

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プラチナ 「90周年記念 25G カーボン軸」 のレビュー

 プラチナの創立90周年記念の「25G カーボン軸万年筆」です。発売されてから時間が経っていますが、安価な価格で販売されていましたので、思い切って購入しました。

 →プラチナ 「90周年記念 カーボン軸万年筆」 を購入した

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(1)外観

 軸は東レ株式会社製のカーボンシートで成形されており、大きさに比べてとても軽い万年筆です。カーボンはマトリックス調に編み込まれていて、光に照らされるとその模様が独特な印象を与えます。

 中央部が膨らんだ独特の樽型形状で存在感のある万年筆です。金属部も変わった形で面取りされていて、ユニークで好印象です。

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(2)ペン先

 ペン先は#3776系列のニブですので、安心の書き味です。90周年専用の刻印とバイカラー装飾が特別感を感じさせてくれます。

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 最近になって#3776がリニューアルされ、インクフローが多めの仕様に変更されました。しかしこちらは旧仕様ですので、抑えたインクフローでシャキッとした字を書きたいという場面に合っています。新旧#3776はどちらも一長一短ですので、うまく使い分けていこうと思っています。

 →プラチナ 「#3776 本栖」 のレビュー

(3)筆記バランス、書き味

 独特の形状を持つ万年筆だけに、筆記する上での制約があります。中央部の膨らみはかなり急で、しかも金属金具がセットされていますので、この膨らみ部分を持って筆記することは難しいです。ですので、ちょうどこの位置を持って筆記する人にとっては、この万年筆は使いにくいと思います。実際、人を選ぶ万年筆だという意見を聞いたことがあります。可能であれば試筆をして購入された方が無難かと思います。

 軽い万年筆ということもあって、キャップを後ろにポストしてもしなくても、どちらでも快適に筆記できます。私はキャップをポストしない派ということもあって、ほとんど重さを感じずに扱えます。

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(4)その他

 嵌合式ですので、手早く開け閉めできます。中央部が膨らんだ形状ゆえに、手持ちの万年筆では「最も片手で簡単にキャップを開け閉めできる」万年筆です。

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(5)総評

 独特なデザインと軽量さが特徴の万年筆です。独特の存在感を持った万年筆ですので、価格も手頃になってきた今、デザイン買いもありではないでしょうか。#3776ニブがリニューアルされましたので、旧#3776を今の内に購入しておきたい、という要望にも応えられます。

 ただ樽型デザインゆえに持つ位置が制限されますので、その点には注意が必要かと思います。

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※スペック一覧

・重さ 全体:23.5g キャップ:11.5g キャップなし:12g
・長さ 全長:14.6cm キャップなし:12.6cm 後尾にキャップ:15.5cm
・太さ 首軸最小径:9mm 首軸最大径:12mm 胴軸最大径:16mm 胴軸最小径:18mm キャップ先端:15mm キャップ後端:11mm

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プラチナ 「#3776 本栖」 のレビュー

 ペン先が乾きにくくなる「スリップシール機構」を搭載した新型#3776である「#3776 本栖」を購入しました。この本栖は限定2,011本で、スリップシール機構がよく分かるデモンストレーター仕様です。9月には黒軸の通常版が発売される予定になっています。

 早速届いた本栖を試してみましたが、ボディもキャップリングも大柄になって高級感が増し、またインクフローも良くなっていて、とても満足できる仕上がりです。

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(1)スリップシール機構

 この機構は内蔵されたバネによって、インナーキャップがしっかりと首軸に密着するようになっています。これにより、インクの乾燥が防げます。この機構は元々は低価格万年筆のプレピープレジールで採用されていたものですが、ネジ式キャップでも機能するように、インナーキャップも回転するように設計されています。

 書き出しかすれの問題は万年筆を使う上での悩みの一つでしたが、これなら長期間使わなくても安心して使用できるでしょう。

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(2)ペン先&ペン芯

 今回の#3776のリニューアルに合わせて、ペン先とペン芯も改良が施されています。聞くところによると、インクフローを増やすことを主目的とした改良だそうです。実際に筆記してみると、かつての#3776の特徴であったインクフローの渋さが消え、潤沢にインクが供給されて、とても気持ちよく筆記できます。旧#3776と比較すると、ペン芯が幅広になっていて、これが潤沢なインクフローを生んでいるのでしょう。もちろんインクフローが渋い方が好きな方にとっては残念な変更かもしれませんが、潤沢フローが好きな方にとっては待ち望んだ改良と言えるのではないでしょうか。

 →プラチナ 「旧型 #3776」 のレビュー

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 ニブの方は基本的な形は変わらないのですが、首軸内に入り込んでいるニブの部分が短くなっています。これは残念な変更です。というのも、首軸内に長くニブが入り込んでいる方がニブが硬く固定されますので、ペン芯ズレなどのトラブルが生じにくいのです。今回の変更はおそらく金価格の高騰に伴うコスト削減が目的でしょう。ただし、ペン芯ズレを防ぐために、ペン芯にニブを固定する型がかっちりつけられている ようです。ですので、ニブが短くなっていますが、ペン芯ズレの心配はないかもしれません。その辺りは、長期使用してからおいおいレポートしたいと思いま す。

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(3)胴軸

 胴軸は旧#3776に比べると中央部がふっくらとした形状になっており、高級感があります。またサイズも大きくなり、キャップリングも豪華になっています。胴軸の中央部は飾りの面取りがされていて、なかなか良い雰囲気です。

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 国産三社は1万円台と2万円台の2種類の万年筆をサイズ違いで発売していますが、この「#3776 本栖」は、各社の2万円台の万年筆に匹敵する存在感を持っていると感じます。プレジデントと比較してもどちらが上のクラスなのか分からないぐらいです。もともと#3776は1万円台にしてはニブが大きめでしたが、胴軸がグレードアップしたことで、非常にお得感のある万年筆に仕上がっていると思います。9月発売の通常版「#3776 センチュリー」が楽しみです。

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(※上から、プレジデント、本栖、旧#3776です。)

(4)筆記バランス、その他

 筆記バランスは、キャップに金属部品が増えたので重心が後ろ気味になるのかと思いましたが、実際の所はそうでもなく、筆記感は旧#3776と同じ印象です。

 一つ注意すべき点としては、ネジの上部に少し段差ができています。私は気にならないのですが、「この部分をちょうど持つから少しの段差も気になる」という方の場合は、試筆してから購入された方が良いでしょう。

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(5)総評

 この新型#3776は、「インクが乾きにくい」「デザインが豪華に」「インクフローが潤沢に」という3つの点で、旧型から大きくグレードアップしています。国産のスタンダード万年筆としては近年になかった大改革と言えるのではないでしょうか。

 こうなると気になってくるのは、セルロイドなど他の#3776装着モデルがどうなるかですね。新旧混在となるのか、あるいは新型にすべて移行するのか、目が離せません。一方、旧型が好きという方は、在庫がある今のうちに旧型を購入された方が良いかもしれません。

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※スペック一覧

・重さ 全体:20.5g キャップ:10.5g キャップなし:10g
・長さ 全長:14cm キャップなし:12cm 後尾にキャップ:15.4cm
・太さ 首軸最小径:10mm 首軸最大径:10.5mm 胴軸最大径:13mm 胴軸最小径:10mm キャップ先端:15mm キャップ後端:12mm

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パイロット 「エラボー (メタル軸Ver.)」 のレビュー

 パイロット「エラボー」の金属軸バージョン、SEFです。パイロットのエラボーは初期のモデルは樹脂軸でしたが、新しく金属軸のモデルが発売されました。購入から遅くなりましたが、この新モデルをレビューしたいと思います。なお、初期のような樹脂軸も新たに発売されます。

 →パイロット  エラボー 万年筆(高級万年筆の文栄堂)

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(1)ペン先

 エラボーのペン先は中央部が大きく湾曲しています。海外ではこのエラボーは「ファルコン(Falcon)」という名前で販売されています。その名前の通り、ハヤブサのくちばしやかぎ爪を思わせる独特な形状です。

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 この独特な形状から醸し出される筆記感もまたユニークです。どちらかと言えば柔らかいニブなのですが、パイロットのS系ニブとは異なり、弾力が一定ではないのです。つまり、ある程度力をかけるまではニブはしならず、一定以上の力を入れるとニブの中央部からクッとしなる感じです。こういう筆記感は他の万年筆ではなかなか味わえません。

 そうした独特のニブ特性ゆえに、かなり趣味性の高い万年筆だと思います。使いこなすにはある程度の慣れや技量が必要です。ですので、万年筆を使い始めの人には少し薦めにくいです。ある程度いろいろな万年筆を使ってきたマニアの「遊びで使うちょっと変わった万年筆が欲しい」という要望に応えるための万年筆だと言えるでしょうか。

(2)筆記線

 エラボーは弾力のあるニブだけに、力を加えると切り割りが開き、線が太くなります。この特性を利用すれば、線に抑揚がつけられますので、日本語特有の「止め」 「はね」「払い」の表現が可能です。…というのがパイロット公式サイトでも説明されていることです。

 →日本語に適した万年筆エラボー (パイロット公式サイト)


 その説明には確かに納得できる面もあるのですが、ではこのエラボーを使えば誰でも美しく日本語を書けるかと言えばそうでもないと思います。この弾力のあるニブを使いこなして思い通りに抑揚のある線を引くというのはかなり難しいです。実際、私は使いこなせてません。ですので、あまりこのエラボーに過剰な期待をしすぎない方がいいかもしれません。筆で綺麗な文字を書くのに修行が必要なように、このエラボーも使いこなしにかなりの慣れが必要だと思います。

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 なお、私は細字好きだけに SEF を購入しましたが、これはちょっと失敗だったかもしれません。細すぎるために、あまり大きく線の抑揚がつかないのです。このエラボーの場合はその特徴ゆえに、ある程度太字を購入した方が面白いのではないかと思います。

(3)筆記バランス

 金属軸だけに29gと重めです。樹脂軸のカスタム74が17gですから、かなり筆記感は違い、重さを利用して筆記するという感じです。ネットを見ると、旧エラボーの方が使いやすかったという声も、今の方が好きという声も両方あります。ペン先が独特な性質を持ちますから、試筆するなどして、自分に合った方を選ばれると良いでしょう。

 重心位置は標準的で、特に使いにくいということはありません。キャップを後ろに嵌めても嵌めなくても、どちらでも使えます。

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(4)外観

 軸のラッカーは、深みのある色でとても綺麗だと思います。キャップリングやクリップはかなりシンプルですね。シルバートリムということもあって、機能的デザインでクールだと思いますが、少し味気ない印象はあります。この辺りは好みが分かれるところでしょうか。

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(5)その他

 このエラボーはカスタム74などに比べると首軸がかなり長めです。普通に持つと指がネジに当たって痛いという方でも、これなら安心です。(※もちろん逆パターンもあり得ますが。) 私はほとんどの万年筆でネジ付近を持ちますので、こうした首軸の長い万年筆が増えてくれると嬉しいですね。

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 この首軸の長さのせいで、カスタム74系列とは首軸交換は少し難しいです。ただそれでも私は時々交換して楽しんではいます。

 →エラボーにカスタム74の胴軸を装着して使う

(6)総評

 他にはない独特なペン先を持ち、面白い筆記感を求めている人の期待に応えられる万年筆です。ただそれだけに扱いは難しく、期待はずれに終わる可能性もあります。ですので、可能であれば試筆してから購入された方が良いでしょう。もちろん、万年筆マニアの方ならコレクション目的で購入するのもアリでしょう。

 現行のエラボーは金属軸ですが、新しくカラフルな樹脂軸バージョンも出るようですので、軽い方がいいという方はそちらを購入されると良いでしょう。

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※スペック一覧

・重さ 全体:29g キャップ:14g キャップなし:15g
・長さ 全長:13.8cm キャップなし:12.6cm 後尾にキャップ:15.7cm
・太さ 首軸最小径:9mm 首軸最大径:11mm 胴軸最大径:12mm 胴軸最小径:9mm キャップ先端:13mm キャップ後端:10mm

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セーラー 「プロフェッショナルギア マーブルエボナイト」 のレビュー

 セーラーの「プロフェッショナルギア マーブルエボナイト」のF字です。私にとって、最初のエボナイト軸の万年筆です。

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(1)外観+エボナイト

 黒と赤色が混じり合った木目のような綺麗な模様でとても気に入っています。このエボナイトはドイツから輸入したもので、もう手に入らないという噂も聞きます。昔からエボナイト万年筆を手に入れたいと思っていましたので、なくなる前に手に入れられて良かったです。

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 エボナイトは独特の質感がありますが、光や湿気で変色しやすいのが弱点です。私は万年筆をデスク上のトレイにガチャッと並べて、使いたいときに取り出して使うのが好きですので、光に弱いというのは深刻な問題です。光の当たらない引き出しにでもしまっておけば安心ですが、それでは使い勝手が落ちます。

 ということで、私は多少の変色は仕方がないと割り切って、デスクライトの下でガンガン使っています。エボナイト万年筆を日常使いする場合は、そうした割り切りが必要かもしれません。パイロットのカスタム845の場合はエボナイトの胴軸表面に国産漆が塗られていますので、変色が嫌な方はこちらを選ぶというのも手です。

 →エボナイト製万年筆における、変色と曇り問題

(2)ペン先

 ペン先はセーラー標準の21Kニブです。私はこの穂先の長い21Kニブの独特な書き味をを長らく苦手としてきましたが、最近になって扱い方が分かってきて、問題なく使えるようになってきました。ですので、購入時よりも最近の方が使用頻度が高いです。セーラー21Kニブは熱狂的なファンがいる一方で、私のように苦手にする人もいて、好き嫌いが分かれるペン先だと思います。ですので購入前に試筆された方が無難かと思います。(※ただ、短時間の試筆で自分との相性を見極めるのは困難ではあるのですが。)

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(3)キャップ

 プロフェッショナルギアのキャップには2種類の仕様があります。二重リングが装着された少し細めのキャップと、大型リングの付いた少し大きめのキャップです。私はこちらの大型リングの仕様の方が、迫力があって好きですね。もうすぐ発売になるプロフィットFLも大型リングバージョンなので購入が楽しみです。

 →セーラー万年筆の2種類のキャップリング

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(4)筆記バランス

 見た目の印象とは異なり、とても軽い万年筆で、とても扱いやすいです。エボナイトの軽量さを最大限に生かした万年筆だと思います。私はキャップを後ろに挿しませんので、12.5gという軽さを生かして手軽に筆記しています。

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(5)その他

 このマーブルエボナイトには金トリムと銀トリムの2種類があります。クールな印象のある銀トリムの方がマーブル柄に合っている印象がありましたので、銀トリムを購入することにしました。なかなかいい感じです。

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 ただ、私が持つセーラー21K万年筆は、プロギアモザイクを除けばみんな銀色のペン先なんですよね。「プロフィット21銀(2本)、グランザスネオ、プロギア モリタカラー、マーブルエボナイト」のすべてがロジウムペン先で、偏っています。来月に購入予定のプロフィットFLを含めると7本中6本が銀色のペン先という状況に。別に狙って購入しているという訳ではないのですが、なぜかそういう星の巡り合わせにあります。腐れ縁でしょうか。(^^;

(6)総評

 独特のエボナイト柄が美しい万年筆です。大柄な体躯に似合わない軽快な筆記が可能な1本だと思います。材質のエボナイトに関しては曇る問題がありますので、好みが分かれるかもしれません。曇らないようコレクション・ボックスに大事にしまうか、あるいは曇るのを覚悟の上で使いまくるか、どちらかの選択を迫られます。どちらを選ぶかは好み次第ですね。いずれにしても、他とは異なる独特の個性を持った万年筆で、所有することへの満足度は高いものが得られると思います。

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※スペック一覧
・重さ 全体:27g キャップ:14.5g キャップなし:12.5g
・長さ 全長:13.6cm キャップなし:12cm 後尾にキャップ:15.4cm
・太さ 首軸最小径:10mm 首軸最大径:11.5mm 胴軸最大径:13mm 胴軸最小径:8mm キャップ先端:16mm キャップ後端:10mm

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プラチナ 「#3776 バランス」 のレビュー

 プラチナの#3776バランス、ブラックの細字とワインレッドの中字です。私には珍しく中字も持っています。(※追記:#3776はリニューアルされ、「#3776本栖 / センチュリー」が発売されました。)
 →プラチナ 「#3776 本栖」 のレビュー

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(1)位置づけ

 この#3776バランスは、国産万年筆の「入門用1万円金ペン」トリオの内の1本です。本格的に万年筆の世界に踏み入れたい人が、最初の1本に選ぶのに適当なモデルです。

 →パイロット 「カスタム74」 のレビュー

 残りの2本は「パイロット カスタム74 (or ヘリテイジ91)」、「セーラー プロフィットスタンダード (or プロギアスリム)」です。この2モデルの場合は、バランス型とベスト型がありますが、この#3776の場合はバランス型のみです。

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 (※上がカスタム74、下が#3776です。)

(2)ペン先

 ペン先はとても定評があります。基本的には硬いニブですが、ニブの上面が平らなために、ごくわずかな弾力があります。その弾力がニブにかかる力をうまい具合に受け止めてくれるために、とても気持ちよく筆記できます。(※もちろん、パイロットS系のような軟調ニブというわけではありません。)

 インクフローは抑えめのため、線の始点や終点にキレがあります。楷書をきちっとした字で書きたい人に向いていると思います。その代わり、潤沢なインクの出を利用してサラサラと殴り書きしたい、という書き方には向きません。カスタム74と対照的なペン先だと言えます。

 →国産万年筆 / 三社の細字の特徴と違い

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 文字幅は「超極細・細軟・極細・細・中・太・極太」があり、超極細や極細は評価が高いです。個人的には中細の復活を期待したいです。

 細軟は軟調ニブとして少し独特です。パイロットのS系ニブとは異なり縦にバネ調にしなる感じです。他の軟調ニブとは異なる独特の書き味があるために、好き嫌いが分かれます。ですので試筆してからの購入を勧めます。ただ、軟ニブを在庫している店を見つけるのは少し難しいかもしれません。

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(3)外観

 ペン先は素晴らしいのですが、デザインは正直に言って、イマイチだと思います。その理由はキャップのリングです。#3776のキャップリングは一重で、立体感のない単純なものです。他の「国産一万円台金ペン」と比較しても、#3776のデザインは垢抜けていません。申し訳ないのですが、少し安っぽく感じます。ちょっとした部品のことですから、もう少し頑張って欲しい所です。

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 #3776ニブは好きだけれど、#3776バランスのデザインは好きではないという場合は、2万円になりますが#3776ギャザードを買うというのは一つの手です。こちらは安っぽさは感じません。もっとも、ギャザードは嵌合式ですし、胴軸の凹凸も好みが分かれるものではありますが。一方、ネジ式がいい、派手なデザインが好きという人にはセルロイド万年筆が最適です。

(4)筆記バランス

 16.5gととても軽量な万年筆で、キャップを後ろに挿しても挿さなくても軽快に筆記できると思います。カスタム74と比べると少しだけサイズが小さいです。できる限り軽い万年筆が欲しい人に向いている万年筆です。

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(5)その他

 ネジ式の万年筆で、気密性も問題ありません。両用式でコンバーターが使えますが、プラチナのコンバーターは使っているとだんだんピストンの上げ下げが渋くなる傾向があります。シリコンスプレーなどを使うと快適に使えます。

 →"シリコンスプレー"で吸入機構のメンテナンス

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 また、最近になってカートリッジの差し込み口の仕様が少し変わりました。そのため、最新のプラチナ万年筆と昔のコンバーターの組み合わせだと入りがゆるゆるになってしまいます。そのあたりの事情については、以下のリンクを参照してください。

 →プラチナ万年筆のコンバーターの入りが緩くなった?
 →プラチナのコンバーター仕様変更の件について - その2
 →プラチナのコンバーター仕様変更の件について - その3
 →プラチナの新型コンバーターを入手

(6)総評

 定評のある#3776ニブを最も安く手に入れられるスタンダード万年筆です。抑えめのインクフローでキレのある字を書きたい人に向いています。その一方でデザイン面では一歩劣ります。その点を重視するかどうかで評価の大きく分かれる万年筆だと思います。

 大きめの百貨店ではプラチナの試筆台が置いてあることが多いですから、外観や書き味を試されてから購入されると良いでしょう。

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※スペック一覧

・重さ 全体:16.5g キャップ:9g キャップなし:7.5g
・長さ 全長:13.5cm キャップなし:11.7cm 後尾にキャップ:14.7cm
・太さ 首軸最小径:10mm 首軸最大径:10.5mm 胴軸最大径:12mm 胴軸最小径:9mm キャップ先端:13.5mm キャップ後端:11mm

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パイロット 「カスタム74」 のレビュー

 パイロットのカスタム74、F字です。本格的に万年筆を使ってみたいという時の入門用万年筆として、絶好の1本だと思います。

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(1)位置づけ

 「入門用万年筆」の定義には色々あります。どんな物でもいいから万年筆を使ってみたい場合はプレピーやハイエースネオ、サファリなどの低価格鉄ペンが絶好です。ただ本格的に万年筆を使いたいという場合はやはり金ペンが対象となります。舶来万年筆の金ペンだとどうしても2~3万円かかりますが、国産だと1万円の普及万年筆を各社が用意しています。

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 1万円の入門用金ペンとしては、パイロット「カスタム74、ヘリテイジ91」、セーラー「プロフィットスタンダード、プロギアスリム」、プラチナ「#3776」が代表例です。それぞれペン先の個性も軸の形状も異なりますから、これらの中から自分の好みの1本を選ぶと良いでしょう。

(2)ペン先

 パイロットのペン先はインクフローに定評があります。パイロットインクが粘性の低い性質を持つことも加わって、低筆圧でもスラスラと筆記できますので、長文筆記しても疲れないというメリットがあります。ただその代わり、ちょっとインクが出過ぎる傾向がありますので、字の始点や終点がぼやけた感じになりやすいです。そうした長所・短所を理解した上で、他の万年筆と使い分けると良いでしょう。

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 ペン先の号数は5号ニブです。3号、5号、10号、15号と数字が大きくなるに従ってニブは大きくなります。カスタム74系列だとカスタム742が10号、カスタム743と823が15号です。なお、ニブが大きければ書き味が良いという訳ではありません。ニブの大きさによって確かに書き味が異なりますが、人によっては小さいニブの方が扱いやすいと感じる人もいます。好みは人それぞれですので、店頭で試筆して自分にあったモデルを購入されると良いでしょう。

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 →縦横の字幅が異なる舶来EFは好みではない

(3)外観

 カスタム74は軸の両端が丸まっているバランス型です。ただバランス型の始祖であるシェーファーバランスとは異なり、軸の中央部は盛り上がっておらず、円筒形に近いです。楕円型・樽型を求める場合は、プロフィット21やプレジデントの方がそういう形状に近いです。

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(※上がカスタム74、下がプロフィット21です。)


 同じ1万円の「カスタム ヘリテイジ91」は、カスタム74とほぼ同じスペックで、違いはクリップ形状と軸の両端が平らになっているベスト型という点です。違いは形と色だけですから、好みに応じて"カスタム74 シリーズ""ヘリテイジ シリーズ"かを選ぶと良いでしょう。

 (※関連記事)
 →バランス型からベスト型への流行の変化が?

 なお、派生モデルとして透明軸の「カスタム74 透明」や模様軸の「カスタム レガンス」があります。基本スペックはカスタム74と同じです。

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(※上がヘリテイジ91、下がカスタム74です。)

(4)筆記バランス

 重さは17g、長さは14.3cmで、重さも長さも中庸で、とても使いやすい万年筆だと思います。私の最も使用頻度の高い万年筆です。(※正確には派生モデルである模様軸のレガンスですが。)

 キャップを後ろに挿しても挿さなくてもバランス良く使えます。

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(5)インク吸入量

 他社万年筆と比べた場合、カスタム74系列の大きなアドバンテージの一つが、世界最強のコンバーターであるCON-70が使える点です。CON-70は1.1mlと、ペリカンM400などの吸入式万年筆とほぼ同等のインクが吸入できます。吸入式万年筆と比べると、コンバーターだけに扱いやすくてメンテナンス性も高く、機構も堅牢です。もちろんカートリッジも使える訳で、実用万年筆としては隙のない布陣だと思います。

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 そんな最強のCON-70ですが、使用にはちょっとコツが必要です。慣れれば問題ないのですが、最初はちょっと戸惑うかもしれません。しっかりボトルインクにペン先を漬けて、ゆっくりとボタンをプッシュすれば吸入できます。

(6)総評

 1万円台の入門用金ペンとしては非常に完成度が高く、誰にもお勧めできる万年筆だと思います。パイロット・セーラー・プラチナの各1万円万年筆は、それぞれ書き味や細かい意匠が異なります。百貨店など大きめの店舗では各社の試筆セットが用意されていることが多いです。そこで書き比べて、自分にあった万年筆を購入されると良いでしょう。

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※スペック一覧

・重さ 全体:17g キャップ:8g キャップなし:9g
・長さ 全長:14.3cm キャップなし:12.5cm 後尾にキャップ:16cm
・太さ 首軸最小径:9.5mm 首軸最大径:10.5mm 胴軸最大径:12mm 胴軸最小径:10mm キャップ先端:13mm キャップ後端:11mm

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パイロット 「レグノ89s」 のレビュー

 パイロットのレグノ89s、F字です。

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(1)外観

 レグノ89sはとても小型の万年筆です。長さや重さはパイロットのカジュアル万年筆のプレラと似ています。携帯に適した万年筆が欲しい方に向いています。同じ形状の小型万年筆として「レガンス89s」「ステラ90S」があります。木軸が好きな人はレグノ89s、綺麗な樹脂軸が欲しい方はレガンス89s、コストパフォーマンスのいいシンプル軸が欲しい方はステラ90Sを購入されると良いでしょう。

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 (※カスタムレガンスとの比較写真です。)

 レグノ89sに使われている木材はコムプライトです。圧力釜で木材板に樹脂を含ませ、これを幾層にも重ねて熱圧成形した素材です。加工木材ですから、生の木材の風味や熟成を楽しみたいという方には向きませんが、コムプライトは硬くて強く、水を吸収しません。また木目も安定していて、個体差は少ないです。実用として使うには良い木軸万年筆だと思います。

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(2)ペン先

 軸が小型の万年筆だけに、ニブは小型の3号ニブです。小さなニブですから硬いと思われるかもしれませんが、実際は弾力があって柔らかめのニブです。ペリカンのスーベレーンで、小型のM300のニブが柔らかいのと似たような感じです。柔らかいと言っても、パイロットのS系ニブほどの柔らかさはありません。微妙にしなります。

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 正直なところ、私はこのニブが少し苦手です。私は硬いニブで楷書の細字を書くのが好きですので、このニブをもてあまし気味です。ボールペンなど硬いペン先に慣れた万年筆初心者には向かないかもしれません。一方、しなるペン先を使って文字に表情をつけたい人には絶好の万年筆と言えます。(※ただ弾力について過度な期待はされない方がいいです。)

(3)筆記バランス

 小型万年筆ですので、キャップを後ろに挿すことはほぼ必須でしょう。プレラに比べると少し細軸で、細身の万年筆が好きな人向きです。16.5gの万年筆ですから、筆記バランスに極端なところはありません。万年筆の自重で筆記するスタイルの人には物足りないかもしれません。

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(4)その他

 キャップリングやクリップはスタイリッシュなデザインで非常に気に入っています。高級感のある外見だと思います。嵌合式の万年筆で、キャップの開け閉めは快適です。使えるコンバーターはCON-20とCON-50です。

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(5)総評

 弾力のあるペン先を持つ小型木軸万年筆です。木軸は好きだけれど、メンテナンスやインク汚れにわずらわされたくないという方に向いている万年筆です。弾力のあるペン先を用いて味わいのある文字が書けます。

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※スペック一覧

・重さ 全体:16.5g キャップ:7.5g キャップなし:9g
・長さ 全長:12cm キャップなし:10.7cm 後尾にキャップ:13.2m
・太さ 首軸最小径:8.5mm 首軸最大径:10mm 胴軸最大径:11mm 胴軸最小径:8mm キャップ先端:12.5mm キャップ後端:10mm

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