万年筆 / 感想・レビュー (外国産)

Visconti 「ダイアモンド・ジュビリー」のレビュー

 ビスコンティの「ダイアモンド・ジュビリー」、ロイヤルパープルのEFです。「エリザベス女王陛下の即位60周年」記念モデルとして、600本限定で製作された万年筆です。

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 私は紫色の万年筆が好きで、以前からこの万年筆を欲しいと思っていました。しかし価格が10万円を超えるために、なかなか手が出ませんでした。そうしていたところ、海外万年筆ショップの Chatterley Luxuries & Pen TIme で3日間のサマーセールが行われ、このダイヤモンド・ジュビリーが「995ドル→495ドル」と安くなっているのを知り、購入に至りました。

■ロイヤルパープル

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 胴軸は、王冠のベルベット帽の色からとったロイヤルパープルで、微妙な変化のある模様でとても美しいです。個体差があると思われますので、できれば実物を見て購入した方が無難でしょうね。私は安さにつられて、海外からの通販という手段をとってしまいましたが。

 今回は綺麗な軸の万年筆が来て一安心です。ただ私にも通販した結果、模様がイマイチだったり、写真のイメージと実物が違っていてガッカリした経験もありますので、通販には一定の覚悟と失敗しても泣かない心構えが必要なのは確かでしょう。

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 キャップトップには王冠をあしらった装飾があり、非常に独特です。少しやり過ぎ感はありますが、記念品ですのでたまにはこういうのもいいでしょう。私はキャップはつけずに筆記するスタイルですので、邪魔にはなりません。そもそもこのキャップのささり方は非常に浅く、キャップを後ろにさすと19cmの長さにもなってしまいますので、最初からキャップはポストしない仕様なのでしょう。

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■ペン先

 ペン先は今やビスコンティの標準となっている23Kパラジウムです。「ドリームタッチ」という触れ込みの新型ニブですが、私が使う限りは、金ニブとの違いはあまり感じません。他にもビスコンティはニブにクロミニウムを使ったりもしていますが、書き味の違いは素材の違いよりも、ニブの大きさや形状の違いの方が大きく影響しているという印象です。軟調ペン先であれば素材の違いも出やすいのでしょうが、今はガチニブ全盛ですので、どの素材でも似たような筆記感になりやすいですね。

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 →Visconti 「オペラ タイフーン with Tubular Nib」 を購入した


 吸入方式は、ペリカンのスーベレーンと同じく一般的な回転吸入式です。普通とは異なる珍しい吸入方式が好きなビスコンティにしては、変わっていると言えるでしょうか。最初は吸入方式がわからず、尾部をプランジャーのように引っ張ったりしてしまいました。(^^;

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■総評

 変化のあるロイヤルパープル色が美しい、大型で存在感のある万年筆です。価格的になかなか手の出ない万年筆でしたが、セールで安く買えて満足です。

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 こうして、またもやビスコンティの万年筆が増えてしまいました。ビスコンティが作る万年筆は、私の好みにあるものが多くて、あれもこれも欲しくなって困ります。(^^;

 このブログを作るとき、URLアドレスを適当に万年筆メーカの一つを選んでつけました。それから5年で、まさかここまでコレクションがビスコンティづくしになるとはそのときは思いもしませんでした。ビスコンティは今も活発で、いろいろな新奇性のあるギミックを持つ万年筆を製作していますので、これからもビスコンティの万年筆が増えていきそうな予感がしてます。なお、Chatterley Luxuries & Pen TIme さんからは、もう一本万年筆を購入しています。そちらもしばらくして紹介したいと思います。

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※スペック一覧

・重さ 全体:41g キャップ:16.5g キャップなし:25g
・長さ 全長:15.5cm キャップなし:13.5cm 後尾にキャップ:19cm
・太さ 首軸:11.5mm 胴軸最大径:14.5mm キャップ最大径:16.5mm

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モンテグラッパ 「ミクラ」 のレビュー

 モンテグラッパの「ミクラ ピンク」EFです。手のひらに隠せるほどの小型万年筆です。

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■八角形軸

 ミクラはレジンを八角形に削り出して作られているとてもユニークな万年筆です。胴軸は透明感のある素材で作られていて、光の加減でマーブル風の模様に感じられる非常に美しい万年筆です。

 そして首軸やリングはスターリングシルバー製で、豪華に感じられます。この「金属部分がスターリングシルバー製」というのはモンテグラッパお得意の作り方で、多くのモデルがこの仕様で作られていました。ただし、最近のモデルでは当てはまらない例が増えてきました。コスト的に厳しいのかもしれません。

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■ポケットサイズ

 とても全長が短い万年筆ですので、筆記時にキャップを後ろにつけるのはほぼ必須です。セーラーの「プロギア スリムミニ」と同じ仕様ですね。これが面倒だと感じる方は購入を避けた方が無難でしょう。しかし手間がかかる代わりに、ポケットに余裕で入れて持ち運べるほど携帯性に優れます。

 →セーラー 「プロフェッショナルギア スリムミニ」 のレビュー

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 また、ミニサイズ故にカートリッジ専用です。ただし、ヨーロッパ互換でも使えるコンバーターがいくつか出てきています。このミクラで使えるかどうかはわかりませんが、そうした選択肢もあります。

 →カヴェコ スポーツ用の「ミニ・コンバーター」は使えそう

■ペン先

 ペン先は18Kのバイカラーでオシャレなデザインです。個体差かどうかわかりませんが、海外製のEFにしてはかなり細く書けて、細字好きの私にとってかなりお気に入りの一本となっています。

 最近には珍しくペン芯はエボナイト製で、潤沢なインクフローが約束されています。

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■総評

 かなり小型の万年筆ですので、使い手や使用用途をかなり選ぶ万年筆ですが、デザインは美しくユニークで、十分に購入価値のある万年筆だと思います。

 金属部分がスターリングシルバー製と言うこともあって、小型の割には21gと標準的な重さです。そして、キャップを後ろにつけた場合の重心は少しリアヘビーで、そうしたバランスを好む方に向いている万年筆だと思います。

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※スペック一覧

・重さ 全体:21g キャップ:7.5g キャップなし:13.5g
・長さ 全長:11.2cm キャップなし:13cm 後尾にキャップ:14.2cm
・太さ 首軸:8.5mm 胴軸最大径:11mm キャップ最大径:13mm

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ウォーターマン 「カレン」 のレビュー

 ウォーターマンの 「カレン ガーネットレッド」 Fです。このカレンは、ウォーターマンの中で最も有名で、ブランドを特徴付けるモデルと言えるのではないでしょうか。

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■独特なペン先

 カレンは独特なペン先デザインを持つ万年筆です。カレントはフランス語で船という意味ですが、ペン先がまるで船の舳先を思わせるような形状となっていて、とても洗練されたオシャレな万年筆だと思います。このニブデザインだけでも、所有満足度が十分に満たされます。

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 ユニークな形状のペン先ですが、書き味もまたかなり独特です。ペン先は厚く、胴軸とガッチリ一体化しており、しなりや弾力性は皆無です。胴軸が重めの金属製ということもあって、このカレンの書き味を「鉄の棒で書いているよう」と表現する向きもあります。

 現代ではペン先がガチニブなのが当然となり、弾力性がある方が特殊ニブ扱いされる時勢ですが、そういう時代であっても、カレンの硬さは際立っています。ガチニブでも金ニブであれば、筆記時の衝撃や振動を吸収してくれる柔らかさは幾分か感じられるものですが、カレンはそれらとは無縁です。


 そういう独特な筆記感ゆえに、好き嫌いが分かれる万年筆だと思います。私自身は、ちょっと苦手です。基本的には私はガチニブ好きなのですが、このカレンは少し行き過ぎているという印象です。その一方で、こうした硬い書き味が好きだという意見も耳にします。購入する際は店頭で試筆して、自分に合っているかどうかを調べられた方が確実でしょう。

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■コンバーター関連

 カレンは両用式の万年筆ですが、コンバーターを使用する際には注意が必要です。他の万年筆のように、コンバーターを万年筆本体に取り付けてインクを吸入すると、インク漏れしやすくなるのです。ですので、コンバーターを外してインク吸入するよう指導する販売店もあります。こうしなければならない詳しい理由はわかりませんが、カレンは空気穴が胴軸の中央部にある独特の構造になっているのが影響しているのかもしれません。

 →ウォーターマン カレン 万年筆 (オフィスワン北浜店)

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 ただ、インク吸入する度に繰り返しコンバーターを外して吸入する行為にはデメリットもあります。コンバーターの入りが緩くなったり、最悪の場合は吸入口にヒビが入り、盛大にインク漏れを起こすという恐れがあります。実際、吸入口が割れてインク漏れが起こり、原因がわからず悩んだ経験があります。

 → コンバーターの口が割れてしまった

 ですので、このカレンはカートリッジで使用するのが一番無難かもしれません。あるいは、普通に吸入した後にピストン逆回しでインクを多めに戻し、ペン先もしっかり拭いて漏れを防ぐというのも一つの手でしょうか。いずれにせよ、インク吸入がらみでは注意が必要な万年筆と言えるでしょう。

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■「鉄ペン / 金属軸 / 嵌合式」

 メトロポリタンのレビューで、ウォーターマンは「鉄ペン / 金属軸 / 嵌合式」の三拍子が揃った万年筆が多いと書きました。カレンも金属軸で嵌合式ですが、珍しく18Kの金ペンで、豪華な万年筆です。32gと細軸の割に重めで、自重を使ってさらさらと書くのに向いています。

 独特なペン先デザインと書き味で、他とは一風変わったユニークな万年筆です。洗練された美しいデザインの万年筆が欲しいという方、硬い書き味の万年筆が欲しいという方には、このカレンは良い購入候補になると思います。

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※スペック一覧

・重さ 全体:32g キャップ:11g キャップなし:21g
・長さ 全長:14.5cm キャップなし:13cm 後尾にキャップ:15m
・太さ 首軸:11mm 胴軸最大径:12mm キャップ最大径:13mm

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シェーファー 「レガシーヘリテージ」 のレビュー

 シェーファーの「レガシーヘリテージ キングスゴールド」XFです。このキングスゴールド柄はすでに廃番になっていますが、今も他の柄や素材のモデルは現役です。この万年筆はかなり昔に購入したもので、持ち歩き用として使用していたこともあって胴軸が少し傷ついています。

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■インレイニブ

 レガシーヘリテージは、シェーファーの伝統であるインレイニブを装着した独特の万年筆です。ニブははめ込み式で、日本語で書くと象嵌とも書くようですね。ペン先もシェーファーらしく、やや反り上がったウェーバリー系で、スムーズな筆記感覚があります。

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 このインレイニブの制作過程は、以下の写真で見られます。打ち抜く前はまるでイルカのような形状で、なかなか面白いですね。

 →SHEAFFER TARGA INLAID NIB PROCESS FRAME  (sheaffertarga.com)

 ところで、日本語ではインレイニブと表記されることが多いようですが、海外だと inlaid nib と表記されますので、インレイドニブと書いた方が自然なような気もしますが、どうなんでしょうか。まあ、カタカナで書いた時点で日本語なので、気にした方が負けなのかもしれません。(^^;

■胴軸デザイン

 レガシーヘリテージは葉巻型の太軸が特徴の万年筆です。同じインレイニブのタルガが細軸でしたので、上手く棲み分けできていました。残念ながらタルガが廃番になってしまいましたので、今は細軸はVLRとの比較となるでしょうか。標準的な万年筆よりもかなり太軸ですので、太軸好きで押し出しの強い万年筆が欲しいという方に合った万年筆だと思います。

 →Sheaffer 「VLR」 のレビュー
 →シェーファー 「タルガ 1180 イエロースワール」 を入手

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 なお、レガシーヘリテージは歴史があるモデルのため、いろいろなデザインの万年筆が発売されています。「レガシー → レガシー2 →レガシーヘリテージ」という流れです。以下のサイトで全モデルの外観が見られます。

 →SHEAFFER LEGACY REFERENCE LIST (sheaffertarga.com)

■総評

 金属の太軸ですので、35gとそこそこ重めの万年筆です。自重を利用した筆記の仕方が向いています。そうしたタイプの万年筆が欲しい方に向いた万年筆です。

 シェーファーの代表的なモデルの割には、定価が3万円程度と比較的安価で購入できますので、シェーファー独特のインレイニブや反り上がったペン先を試してみたいという方には良い選択肢と言えるでしょう。

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※スペック一覧

・重さ 全体:35g キャップ:12g キャップなし:23g
・長さ 全長:13.9cm キャップなし:12.1cm 後尾にキャップ:14.8cm
・太さ 首軸:12mm 胴軸最大径:13.5mm キャップ最大径:14mm

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ウォーターマン 「メトロポリタン」 のレビュー

 ウォーターマンの「メトロポリタン スターダストゴールド」EFです。海外では hemisphere というモデル名で販売されている製品です。今は後継の「メトロポリタン エッセンシャル」と、高級版の「メトロポリタン デラックス」が発売されています。

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■鉄、金属、嵌合

 この万年筆はウォーターマンらしく「鉄ペン / 金属軸 / 嵌合式」の三拍子がそろったモデルです。もちろんウォーターマンにも金ペンや樹脂軸、ネジ式の万年筆はありますが、上記の三要素を満たす万年筆が圧倒的に多いのが特徴のメーカーです。メトロポリタンはそうしたウォーターマンの伝統(?)をしっかり受け継いだ由緒正しき万年筆と言えます。(^^;

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 この万年筆は約1万円で、海外製万年筆としては比較的カジュアルなモデルです。ただ、国産だと1万円を出せばカスタム74などの金ペンが購入できるわけで、1万円で鉄ペンということをどうとらえるかは、人によって違うでしょう。1~3万円あたりの価格帯は微妙なところで、国産と海外産の差が一番出てくるレンジと言えます。3万円以内の予算で金ペンにこだわる方は、国産の万年筆を購入した方が無難かもしれません。

■オシャレなモデル

 フランスの万年筆ということもあって、なかなかオシャレな外観を持っています。キャップトップのカッティングから中空のクリップに続くデザインは流麗です。

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 金属軸ですが24gと重すぎるということもなく、手軽に使えます。書き味や筆記バランス等は標準的で、誰でも違和感なく扱えるでしょう。しかし逆に言えばとがった特徴のないモデルとも言えるかもしれません。今回ブログを書くにあたって重さや長さなどを調べましたが、スペックはパイロットのグランセと非常に似通っていました。

 →パイロット 「グランセNC 2013年春限定 太陽」 を購入した

■総評

 低価格で海外ブランドの万年筆が欲しいという方に向いている万年筆です。細身で嵌合式の万年筆ですので、カジュアルな普段使いとして用いるのが似合っています。鉄ペンであることをどう見るかで評価が変わってくる万年筆でしょう。洗練されたデザインの万年筆ですので、デザイン買いもアリだと思います。

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※スペック一覧

・重さ 全体:24g キャップ:8.5g キャップなし:14g
・長さ 全長:13.7cm キャップなし:12.1cm 後尾にキャップ:14.6cm
・太さ 首軸:9mm 胴軸最大径:11mm キャップ最大径:11.5mm

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ウォーターマン 「フィリアス」 のレビュー

 ウォーターマンのフィリアス、EFニブです。この万年筆は1万円以内で購入できたカジュアルペンで、とてもコストパフォーマンスの良い万年筆でした。すでに廃番になっていますが、今も使用することが多いです。

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■大きなニブ

 このフィリアスの一番の特徴は、ペン先の大きさでしょう。低価格ペンだけにスチールペンなのですが、大きさが大きいためにインク保持量も多く、安定したインクフローが実現できており、とても快適に筆記できます。デザイン的にもバイカラーで、低価格の鉄ペンにしてはゴージャスです。

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 胴軸は軽めの樹脂軸で、大理石風のデザインがいい感じです。ただ手にとって近くでよく見ると、ややプラスチッキーな印象がありますね。価格を考えるとやむを得ないところでしょうか。全長は少し短めで、コンパクトなポケットサイズの万年筆です。

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 ちなみに、クルトゥールはこのフィリアスと金型が同じで、デモンストレーターバージョンとも言えます。クルトゥールとフィリアスの違いは、フィリアスにはインナーキャップがあるため、ペン先が乾きにくいということです。クルトゥールはペン先の乾燥に悩みやすい万年筆のため、性能的にはフィリアスに軍配を上げます。クルトゥールも私は所有しているのですが、写真を撮ろうと探してみましたが、行方不明です。いずれ出てくるでしょう。(^^;

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■初期メンバー

 このフィリアスは、私が万年筆を購入し始めた初期の頃に手に入れたもので、それだけに使用頻度が高く、思い入れもあります。本来は廃番になる前にレビューを書くつもりでしたが、何となく書くのが遅れて、今頃になってしまいました。今からですと、入手は中古ショップかオークションが中心となるでしょうか。

 所有万年筆が増えた今ではさすがに使う機会が減っていますが、ペントレイの奥から発見し、懐かしさもあってインクを入れて使っています。使えば使うほど、いい万年筆だと実感します。廃番になる前に手に入れられたのはラッキーでした。

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※スペック一覧

・重さ 全体:20.5g キャップ:7g キャップなし:13.5g
・長さ 全長:14.5cm キャップなし:12.8cm 後尾にキャップ:14.7cm
・太さ 首軸:11mm 胴軸最大径:12mm キャップ最大径:14.5mm

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ビスコンティ 「ヴァン・ゴッホ マキシ クリスタル」 のレビュー

 ビスコンティの「ヴァン・ゴッホ マキシ クリスタル」です。ヴァン・ゴッホはカラフルな色使いを特徴とするシリーズですが、これは透明軸のデモンストレーターです。私はヴァン・ゴッホはカプチーノを所有しています。同じモデルですので、基本スペックは同じです。

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 →ビスコンティ 「ヴァン・ゴッホ マキシサイズ カプチーノ」 を入手

■デモンストレーター

 このデモンストレーターで面白いところは、キャップ内にインナーキャップが存在しないことです。例えばカスタム823であれば、キャップ内に気密性を保つためのインナーキャップが存在しますが、このヴァン・ゴッホでは、キャップの内側がインナーキャップ状に成形されていて、ぴったり固定されます。中が見えるデモンストレーターではこういう使用の方が見た目がいいですね。

 ビスコンティのクリップは独特の形状と機構を有していますが、このデモンストレーターで内部の仕組みがわかります。クリップを開くと、背面の丸い部品が引っ込みますが、その理由がよくわかります。

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■フロントヘビー

 ヴァン・ゴッホは胴軸が樹脂製の一方で首軸が金属製のため、珍しいフロントヘビーの万年筆です。セーラーの「プロフィットFL」と同じです。私はこの重量バランスが結構好きで、よく使用します。こうした万年筆がもっと増えてくれると嬉しいのですが、あまりメジャーになりませんね。万年筆愛好家は比較的軸の中央を持つ人が多いですので、フロントヘビー好きは少数派なのかもしれません。

 →セーラー 「プロフィットFL」 を入手


 フロントヘビーの代償として、首軸が金属で少し滑りやすいです。これは人によって違うと思うのですが、私は乾燥肌のため、持つ場所が金属だと滑る感覚があって苦手です。できれば金属の場合は滑らない加工を望みたいところです。

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■Tubelar nib

 ペン先は普通の14Kニブです。ビスコンティではパラジウムニブが標準となり、その後に Tubelar nib も登場し、今では14Kニブはクラシカルな印象もあります。ペン先がユニット式で他の万年筆とユニットごと交換できるのはありがたい仕様です。

 →ビスコンティ 「オペラ タイフーン with Tubular Nib」 を購入した


 私はイタリア万年筆ではビスコンティの万年筆を飛び抜けて多く所有してます。ビスコンティは綺麗な軸が多く、またギミックを満載した万年筆が多いので、一番好きなイタリア万年筆ブランドです。まだ紹介していない万年筆がありますので、おいおい書いていきたいと思います。

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※スペック一覧

・重さ 全体:32g キャップ:14g キャップなし:17g
・長さ 全長:14.
5cm キャップなし:12.8cm 後尾にキャップ:16.8cm
・太さ 首軸:11mm 胴軸最大径:1
3mm キャップ最大径:15mm

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Danitrio 「ぼかし塗り グリーン 万年筆」 のレビュー

 Danitrioの「ぼかし塗り グリーン 万年筆」です。ペン先は軟調のEEFニブで、私好みの細字が書けます。

 Danitrio(ダニトリオ)は、漆塗りや蒔絵の万年筆を製造しているアメリカの手作り万年筆メーカで、海外の万年筆ファンをメインのターゲットとして販売しているメーカです。(※ただ後述の通り、制作者は日本人であったりするようです。) 高額な万年筆ばかりということで、名前は聞きつつもなかなか手に入れる機会はありませんでしたが、ebayで細字のEEFニブが出品されているのを発見し、入手に至りました。

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(※関連記事)
 → eBayで万年筆を落札してみた

(1)胴軸

 私はここ数年、漆塗りの万年筆がとても好きになっていますので、その流れでこの万年筆を手に入れました。緑色の漆は初めてです。落ち着いた色合いで、雰囲気が出ています。中央部に白模様があって、そこがぼかし風味になっているのが、良いデザイン上のアクセントになっていますね。

 首軸には「晃岳」の銘があります。どうやら、工房晃岳の岡崎晃一朗氏が制作された万年筆のようです。

 →工房晃岳のホームページ

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(2)ペン先

 ペン先は軟調のEEFです。外国製のペン先はどうしても太字傾向ですが、これはEEFだけあって、ペンポイントは国産のF相当で、私好みの細字が書けます。パイロットのカエデやS系ニブに近い感じの筆記感ですね。大きなニブですので、インクフローもたっぷりで、インクが盛り上がるように細い線が引けて、いい感じです。ただ、私はそれほど軟調ペン先を得意とはしていませんので、大量筆記には向かない感じでしょうか。

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(3)筆記バランス

 この万年筆は手持ちの万年筆の中でも有数の太軸で、迫力があります。ただ、エボナイトに漆塗りという中屋万年筆と同じ仕様ですので、大きさの割には軽くて扱いやすいです。使用感はプラチナの出雲に近い感じです。漆塗りという点でも、出雲に似ていますね。

 →プラチナ 「出雲 溜塗り 空溜」 を購入した

 キャップは後ろにささらない仕様ですので、キャップを後ろにさすのが好きな方には向かないかもしれません。私は原則としてキャップはポストしませんので、問題はありません。

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(4)その他

 Danitrioの万年筆には、アイドロッパー方式とコンバーター方式の2種類がありますが、これはコンバーター方式です。ヨーロッパ互換方式のコンバーターを使用します。

 気になる点としては、キャップを閉めるのに4回転半も必要で、ちょっと面倒です。もう少し回転数は減らして欲しかったところです。

 →多条ねじについて

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(5)総評

 気になっていたDanitrioの漆塗り万年筆を、EEFという私好みの細字で手に入れることができて、とても満足です。

 Danitorioの万年筆は、10万円を超えるような高額品が多く、なかなか手に入れるのは難しかったのですが、ebayでそこそこの価格で落札できました。その頃はアベノミクスが発動する前の円高時代だったことも後押ししてくれました。ただ、今は円安時代ですので、続いての落札はハードルが高いかもしれません。今から考えると、ちょうど良い時期に手に入れることができて、運が良かったです。


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※スペック一覧

・重さ 全体:31.5g キャップ:15g キャップなし:16.5g
・長さ 全長:15cm キャップなし:13.2cm
・太さ 首軸中央径:12.5mm 胴軸中央径:16.5mm キャップ中央径:17.5mm

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アウロラ 「イプシロン・シルバー」 のレビュー

 アウロラの「イプシロン・シルバー」、F字です。

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(1)位置づけ

 アウロラと言えばオプティマが有名で、それ故にペリカンと並んで吸入式万年筆のメーカーというイメージがあります。しかしこのイプシロンは両用式です。価格も安めで、オプティマよりもカジュアル方向に振った万年筆と言えます。

 →Aurora 「オプティマ」 のレビュー

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 この「イプシロン・シルバー」は、胴軸がスターリングシルバー製となっています。イプシロン・シリーズの高級版と言えるでしょうか。ただ高級版とは言え、私が購入したときは定価が21,000円と安く、14,000円で購入できました。少し値上がりして今は26,250円となりましたが、それでもお手頃価格です。

 普通は銀軸の万年筆は高級品として高めの値付けがされるのが普通ですが、これは舶来万年筆では最も安く買える銀製万年筆の一つと言えるでしょう。とてもコストパフォーマンスの良い万年筆だと思います。位置づけ的には、パイロットの「グランセ スターリングシルバー」に近い感じですね。

 →パイロット 「グランセ スターリングシルバー」 を入手

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(2)ペン先

 ペン先はオプティマに比べてかなり小さめで、ガチニブです。書き味はサリサリ系で、鉛筆で書いているような感覚があります。これはオプティマも同様です。アウロラのEFは、国産には及ばないものの海外製万年筆としては比較的細めで、細字好きの私としては嬉しいメーカーです。

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 ただ気になる点としては、オプティマと同じくペン芯ズレを起こしやすいです。ひねり書きの癖がある私としては歓迎しないポイントです。そうした傾向がありますから、ペン先が緩まないよう、ニブを引き抜いたりするのは避けた方が良いでしょう。

 →ペン先を引き抜くことの危険性と弊害

(3)筆記バランス

 金属軸ですがあまり重くなく、快適に筆記できます。キャップも重くないので、キャップを後ろにポストしてもしなくても大きくは筆記バランスは変わりません。

 キャップは後ろにつけるときは、他の万年筆のように摩擦力でとめる方式ではなく、後ろのリングでパチンと勘合する方式です。そして後ろにつけたキャップは固定されずにくるくる回せます。私は問題にしませんが、これが気になるという人もいるかもしれません。

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(4)総評

 低価格で購入できるカジュアルな銀製万年筆です。嵌合式ですので、さっと取り出して使う用途に向いています。

 できるだけ安い価格でスターリングシルバーの万年筆が欲しいという方には、パイロットのグランセと並んで、良い候補になると思います。細字好きとしてはEFが存在するのが好印象です。

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※スペック一覧

・重さ 全体:30g キャップ:11g キャップなし:19g
・長さ 全長:13.6cm キャップなし:12cm 後尾にキャップ:15cm
・太さ 首軸最小径:9mm 首軸最大径:11mm 胴軸最大径:12mm 胴軸最小径:8mm キャップ先端:13mm キャップ後端:10mm

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ペリカン 「スーベレーン M600」 のレビュー

 ペリカンの「スーベレーン M600」、緑縞のEFです。

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 →ペリカン スーベレーン M600 緑縞 EF (amazon.co.jp)

(1)位置づけ

 ペリカンのスーベレーン・シリーズは、いくつかのカテゴリに分けられます。「携帯用の小型 M300」、「軽めの細軸 M400 / M600」、「重めの太軸 M800」、「超大型で柔らかペン先 M1000」と、それぞれが独特の個性を有しています。しかし上の記述で分かるように、M400とM600は他と比べると違いが小さいです。それだけに、M400とM600のどちらを購入するかは判断が難しいです。

 →Pelikan 「スーベレーン M1000」のレビュー


 M600はM400に比べて、「8mm長く、0.3mm太く、2.5g重い」です。それでいて価格が8,400円高いですので、一般にはM400の方が人気があります。しかしそれでも私はM600の方を購入しました。それはM400は私には小さすぎると感じられたのです。実際、カスタム74など国産のレギュラーサイズと比べると、M400はかなりコンパクトサイズです。私はあまり小さな万年筆は好みませんので、価格が高くてもM600を購入した次第です。

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(2)ペン先

 ペン先は小さめですが安定したインクフローで、快適に筆記できます。ただ極細好きの私からすると、ペリカンのEFはFとの違いがあまりなく、太すぎるように感じられます。ですので、私は Richard Binder氏のカスタムXXXFニブを購入したり、昔の細かった時代のEEFニブを入手したりして、極細ニブに付け替えて利用しています。

 →ペリカン 「400 緑縞 EEFペン先」 を入手
 →ウェーバリー加工された「ペリカン XXXF ペン先」を購入した

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(※写真のペン先は18金ですが、実際のM600のペン先は14金です。)


 ペリカンのニブユニットはネジ式で取り外すことができます。そしてM600とM400のニブは互換性があり、交換可能です。ただ、M600のニブはM400に比べるとわずかに長いです。ですので、M600のニブをM400に装着するのは避けた方が良いです。問題のない場合もあるのですが、個体差によっては、ペン先がキャップの天井にぶつかってしまう恐れがあります。

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(3)筆記バランス

 17.4gと軽い万年筆で、キャップをつけてもつけなくても快適に筆記できます。胴軸が少し短めですから、一般的にはキャップを後ろにポストした方が書きやすいでしょうか。ただ私はそれでも、キャップはつけずに使用しています。

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(4)その他

 インクは回転吸入式で、そこそこ多めのインクが吸入できます。一時はピストンが重くなって悩んだこともありましたが、シリコンスプレーを使うことで解決しました。

 →"シリコンスプレー"で吸入機構のメンテナンス

 なお、天冠は少し前に金属の新仕様に変更されました。

 →ペリカンの天冠が、梨地金属タイプに変更

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(5)総評

 ペリカンを代表するスーベレーンの中では一番影の薄いモデルです。スペックはM400に似ていますから、M400の感想やレビューはM600にもほぼ当てはまると言っていいでしょう。

 EFがあまり細くないのが個人的には不満ですが、デスク上で使う軽量レギュラーモデルとして、とても優秀な万年筆だと思います。回転吸入式の万年筆が欲しい方にとっては、パイロットのカスタム92と並んで有力な候補の一つと言えるでしょう。

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※スペック一覧

・重さ 全体:17.5g キャップ:6.5g キャップなし:11g
・長さ 全長:13.2cm キャップなし:12.3cm 後尾にキャップ:15.3cm
・太さ 首軸最小径:10mm 首軸最大径:11mm 胴軸最大径:12mm 胴軸最小径:10mm キャップ先端:14mm キャップ後端:11mm

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